無粋な思考は切り捨てて ページ46
「――それでなー、ついこの前、戦前に作られたっぽい車が家の近くを通って！デュースって車種だったかな？ビックリしたぜ、まだ乗ろうとする奴がいるんだよな。やっぱ好きな奴は好きなんだなぁ」
いつの間にやら車の話になり、彼は口を回らせる。私も適当に聞いていたけれど、むしろ彼のように話し上手ではないから、間を繋げてくれて気が楽になる。
「でもああいう車種って俺もちょっとは憧れるけど、排気ガスが心配なんだよな。ほら、環境活動家とかうるさいからさー…あ、空中ブランコ空いたな！乗ろう、シホ！」
「ええ、そうね」
前の客が空中ブランコを楽しみ終わり、私たちの番になった。勿論お互いに近い椅子に座り、点検が終わると空中ブランコは動き出す。
「ヒャッホーッ！風が気持ちいーーー！！」
(うるさいわね…)
彼は大はしゃぎ。かく言う私も感じる風は心地良かった。空を飛ぶのが好きな人種の気持ちが少しは理解出来たかもしれない。
…純粋に楽しむオルソンに釣られて、私も少し楽しくなったみたい。
(…考え事は無粋ね)
さっきはこれからのことを考えて、いつもの悲観的な思考が出てきたみたい。恐らく彼もそれを察したのだろう。饒舌に話し出しては私の気を未来から逸らした。
私は彼のように楽観的には生きられない。彼のあり方を羨ましくも思う。けれど彼はネガティブになりがちな私を引っ張って、少しでも楽しい気持ちにさせようとしてくれる。
――ああ、本当に。
「…女を見る目が無いわね、オルソン」
「ん？シホ、なんか言ったか？風で聞こえなかった！」
「何でも無いわ。風が強くて目が乾いただけ」
「何っ！？自然この野郎！俺のシホを困らせやがって！」
「何にケンカを売ってるのよ、あなたは」
呆れてしまって、笑ってしまった。
「あーあ、もうちょっと太陽の野郎、顔を出してくれててもいいじゃん」
「だから何であなたは自然に喧嘩腰なのよ」
フード巡り、フォトショップ巡り、お化け屋敷…まあ後ろ二つは写真を断固拒否したり、オルソンがあまりにもうるさいものだから――ということにしておくけれど――途中で抜けたり、思い出作りと呼ぶには散々だったけれど、そうしていると空が茜色に染まってきた。この遊園地は夜になると閉じるから、次に行く所が最後になる。
「それじゃあ、最後のとっておきに乗ろうか。エスコートするぜ。お手を」
「…なら今日は甘えようかしらね」
小慣れた感じのする彼の手を取り、私は観覧車を見上げた。
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想世(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。そのようなお言葉を頂けて嬉しい限りです。シホちゃんとヒロキくんとノア……あれ、ノアはハブられてる！？…と、とにかく彼女達には幸せになってほしいですよね。更新頑張ります。 (2023年4月10日 14時) (
レス) @page41 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
あ - ノア…はまあいいとしてシホとヒロキには幸せになってほしい。特にヒロキ！！生きろ！！！めちゃめちゃ面白いですよこれ凄い好きです。更新頑張ってください！ (2023年4月10日 13時) (レス) id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/
作成日時：2023年2月21日 18時
