謀り事は目論見通りに−�� ページ34
――マサチューセッツ州にある、トマス・シンドラー氏の所有するビル。廊下は常に明るく照らされ、監視カメラも所かしこに配置されている。そんな中、建物内にいる警備の男は、腕につけた腕時計に視線を落とした。
「…そろそろ起床か」
時計の針は朝を知らせていた。であれば、男の目的はようやく果たされる。何故なら、彼の目的は――…
「――ヒロキ、朝だ。起きたまえ」
警備の男は眼前の扉をノックし、中にいる住人へモーニングコールを行った。しばらくして来た返事を確認すれば、部屋の住人は十分足らずで扉を開けて顔を見せた。
「支度出来ましたよ…って、え？」
「ここは監視カメラがある。けど、人に聞かれることは無い。――扉越しなら悪いことも話せるな、ヒロキ？」
「…まさか、ノア！？」
つい先程まで就寝に意識を浸していたヒロキの意識は、驚愕で覚醒した。彼の友人――ノア・オルソンが黒髪のガードマンへ変装し、茶目っ気たっぷりにヒロキへ笑いかけていたからだ。
ノアの言いつけ通り、ヒロキは一旦扉を閉じて会話を試みた。
「どうしてここに？というか、何でわざわざそんな…ノアって変装出来たんだ…」
「おいおい、一気に質問し過ぎだって」
ノアはガードマンのフリをしながら、周りにヒロキ以外の人の気配がしないことを確認して語り出した。
「イヤな予感がするからな。今、お前が扉を閉めるギリギリで部屋に小さいスイッチを投げた」
「…こ、これ？」
ヒロキは閉じた扉の前、足元を探す。するとお目当てのものはすぐに見つかり、彼はそれを拾った。たかが手のひらサイズのスイッチだ、だがノアは深刻そうに声色を低くさせる。
「…別に何も無ければ良いがな。限界だって思ったら、それを押せ。携帯を使えなくなるかもしれないから」
「お、大袈裟な…そんなことで成りすましてまでここに来たの？」
「ま、忍び込むこと自体は楽だったぜ。準備は手間取ったがな。…それにな、ヒロキ。あんまり舐めねぇ方がいいぜ、ああいう狸ジジイは」
「た、狸ジジイって…」
冗談の類であると信じたいヒロキだが、対照的にノアは至極真面目に話す。
ヒロキの頭脳明晰ぶりは常軌を逸しているし、大企業の頭の住む場へ忍び込むとなれば、あらゆる理由から無理だと判断が下すのは容易い。だが現に今、友人はすぐそばにいる。疑問を払拭出来ないヒロキは、まず最初に真っ当な質問をした。
「ノア…君は、一体何者なの…？」
「…あの狸ジジイと同類の男の息子さ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 124人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
想世(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。そのようなお言葉を頂けて嬉しい限りです。シホちゃんとヒロキくんとノア……あれ、ノアはハブられてる！？…と、とにかく彼女達には幸せになってほしいですよね。更新頑張ります。 (2023年4月10日 14時) (
レス) @page41 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
あ - ノア…はまあいいとしてシホとヒロキには幸せになってほしい。特にヒロキ！！生きろ！！！めちゃめちゃ面白いですよこれ凄い好きです。更新頑張ってください！ (2023年4月10日 13時) (レス) id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：想世 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/
作成日時：2023年2月21日 18時
