皮肉の口論 ページ24
校門まで行けば、もうお別れだ。名残惜しく思うが、彼女を引き留めても彼女を困らせてしまうだけ。黄昏の中で寂しげに笑って彼女に手を振って見送れば、俺は彼女とは反対方向へ向く。
「…ん？」
不意にスクールバッグの中のスマホが何度も震える。電話か…取り出せば、相手は身内だった。水を差されたようなうんざりした思いがくすぶり始めるが、無視すると後々面倒だ。取り出して通話ボタンを押せば、通話口を押し当てた。
「――もしもし」
［ノア、急だが俺と代われ］
「…唐突だな。まず主語と目的語をハッキリさせてから喋れとエレメンタリースクールで習わなかったか？」
［わざわざ言わないと分からないほどの低脳だとは、驚きだ。流石は卑しい女の腹から生まれた男だな］
チッ、やっぱりロクなことじゃなかった。不本意ながら血が半分繋がった兄の声に反吐が出そうになりながら、皮肉混じりに応対する。
「もしやサボるおつもりで？ハッ、長男坊が聞いて呆れる。それともこのような卑しい男に頼むほど、プライドも無いというのか？」
［あいにくと、俺はお前と違って忙しいものでな。誠に遺憾ながら猫の手もお前の手も借りたいんだ］
「厄介事を押し付けたい、の間違いだろ？」
［疫病神のお前にはおあつらえ向きの仕事だ。ただ自我を殺してヘラヘラ笑って、お偉方に媚を売るだけ。媚を売るのが性分だったお前の母の真似事だ、簡単だろう？］
「…チッ、分かったよ。テメェよりはスマイルは得意だしな」
［お前はそれだけが取り柄だからな。――さて、俺が出席するハズだったパーティーの開催日は一週間後だ。父さんには取り次いである。精々媚びへつらって、取り入ってもらうことだな］
電話はそこで一方的に切れた。静かに心中で震える怒りを歩きながら噛み殺し、帰路を辿る。
兄が電話してくる時、言いたいことは決まっている。兄の代わりに、お偉方のパーティーに参加することだ。
(…くそッ、金持ちの息子というのもままならんな)
俺は財産で不自由したことはない。が、こうして俺の人権が無視されることもあるもので辟易してしまう。だが無益に楯突いても俺に一切のメリットは無く、従う他ない。
(一週間後、か…)
別に過去に何回か頼まれてきたことだ。今更不安は無い。だが精神的疲弊はどうしても感じるものだ。故に、出来れば勘弁してほしかった。
(…あーあ、ストレスにはシホだ。また無性にシホに会いたいぜ…)
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想世(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。そのようなお言葉を頂けて嬉しい限りです。シホちゃんとヒロキくんとノア……あれ、ノアはハブられてる！？…と、とにかく彼女達には幸せになってほしいですよね。更新頑張ります。 (2023年4月10日 14時) (
レス) @page41 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
あ - ノア…はまあいいとしてシホとヒロキには幸せになってほしい。特にヒロキ！！生きろ！！！めちゃめちゃ面白いですよこれ凄い好きです。更新頑張ってください！ (2023年4月10日 13時) (レス) id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/
作成日時：2023年2月21日 18時
