小手先の悪癖−�� ページ9
スマホを取り出し、すぐさま電話帳を開く。かけるのは当然あの人。
ワンコールで出た。
「もしもし」
［――遥斗さんか！？今どこに…］
「僕もよく分からない…！誘拐犯をのして、車から逃げたのは良いものの…起きた所がどこかのビルの地下で、今一階の薬品管理庫のような部屋に身を隠してるよ」
安室は僕達の誘拐について既知だったのか、慌てて急ぎ口調で出た。焦りで歯噛みしたいのはお互い様、だがそれをする時間すら惜しい。
［灰原さんも一緒か？］
「灰原ちゃんなら僕の隣で寝てるよ」
［なんだかその言い方は気になるが、とにかく眠らされたが無事なんだな］
あ、なんか今の言い方だとNTRっぽかったな…いや、それはともかく。
［逆探知で君の居場所を探ろう。君達はとにかく、僕達が来るまで誰にも見つからないように隠れているんだ］
「助かる…！」
安室は電話を切らぬまま、誰かへ指示を始めた。僕もスマホはそのままに、助けを待つ事しか出来ぬ事へのもどかしさやじれったさに戸惑う。…落ち着かない。
(備えるか)
時間が出来たのなら、強迫症が打ち勝ってしまった。
化学薬品を一つ一つ見回る。が、やはり僕には聞き馴染みの無いものばかりだ。効能の一切合切は不明。灰原ちゃんが見たら、きっと分かるのだろうが…当の本人は壁に背を預けてすやすや寝ている。
(…ヒドラジン…)
唯一知っている化学物質の名を探し、管理庫を回る。が、やはり管理するには危険な薬品だからか、一列に並んでいる瓶にはその名は見られない。
なら厳重に保管しているのか。そう思い、諦めかけた時。机の上に、一つの鍵を見つける。
Ｈ列、と書かれたキータグと、小さな鍵。
まるで運命にでも導かれたかのように、あたかも当然のごとく、その鍵は僕の視界に映った。
「…」
吸い込まれるようにその鍵を手に取った。鍵の差し込み口を探して、歩き回る。
――あった。
そこはアルファベットごとに並ぶ、鍵付きの引き戸の棚の置き場だった。H列の引き出しのどれに鍵を差し込んでも、引き戸は開く。嫌に涼しさで指先が冷える。
何やら難しい英単語や言葉と共に、"ヒドラジン"と書かれた小瓶を手に取った。
(管理さえ誤らなければ大丈夫なハズ)
備えあれば憂いなし。
そのモットーの元、小瓶を鞄にしまった。
今の僕には、例え相手が素手だろうと対人は厳しい。だから、小手先の撃退法は多い方が良かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
