哀色のサバイバーズギルト−�� ページ40
何に対しても手を付けられない。
あの日から、ずっと。
(…今日もあまり眠れなかった)
目の下に出来た隈が睡眠不足を物語っていた。洗面所で鏡と向き合って顔を水で洗うも、水は私の憂鬱な思いを流してはくれない。重く重く溜息を吐いて、その場にへたり込んだ。流水音が厭に耳に響く。
『灰原ちゃん！』
『お、サンキュー！さっすが幼女…じゃなくて、美少女科学者…じゃなくてロリ――いてっ、足踏むなよ！』
『灰原ちゃんってば、ツンデレなんだから〜』
やかましいくらいがちょうど良かった彼の声を覚えている。肌の手入れも食事も睡眠もロクに出来ずに、荒れていった手や髪の感触を覚えている。周りを巻き込んで無理矢理笑顔にするクセに、手遅れになるギリギリまで本心を隠していた彼の弱さを覚えている。好きなものには何の躊躇もなく"好き"だと言ってのける彼の素直さを覚えている。
(――ようやく貴方が前を向いたというのに)
病院に来た風見という安室さんの部下の男の話によると、遥斗さんは自ら爆弾を作ってそれを爆発させたという。
どうしてそんな危険なマネをしたのか、最初は分からなかった。…でもそれは、私が化学を学んでいるから理解出来ないことだった。
(あの時、教えていれば――！)
彼がどうして硝酸アンモニウムやヒドラジンを知っていたのかは、分からない。けれど彼は英語と理系は無理だと苦笑気味に話したことがある。
連鎖反応にまで頭が回らなかったのだろう。ましてやあんな緊急事態となれば。
彼は備えている事に対しては比較的冷静に対処するが、その反動からか規格外の事象には弱い。その上アルマというトラウマの対象を目の前にすれば、尚更思考は冷静に務まるハズが無い。
いや、冷静でいられたとしても、彼は化学に関しては無知だ。結果は変わらなかったと思う。
だからあの時、私が教えていれば。
勿論、彼が隠し手として爆発物を持っていただなんて知らなかった。それでも、彼が"化学物質を撃退に使おう"と言い出した時に、引火性や可燃性についての危険性について説いていれば――…
後悔しても後の祭り。それでも、たらればを乞う。夢想の悪循環に嵌ってしまう程、彼がいないことに深く胸の内が締め付けられる。
――彼が、いたら、
「哀君！？どうしたんじゃ！」
「…博士…、いえ…何でもないわ、少し目眩が」
だから、同居している博士の存在はありがたかった。声をかけられれば、嫌な思考は一旦中止出来たから。
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想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
