妨害されたデウスエクスマキナ ページ19
容赦をするつもりが無いのは、こちらもそうだった。アルマが言う通り、そして安室さんの言う通り、僕は甘い男だ。そのせいで灰原ちゃんにすら、一度魔の手が届いてしまったのだから。
肩から落ちかけたバッグを握り締めた。僕の瞳にまだ反抗的な色を見たアルマは、何を楽しそうにしているのか笑う。
「まだ遊ぶかい？いいよ。君の策を一つ一つねじ伏せる度に、君はまた希望を失うだろうからな」
相手は完全に、僕が病人である事も加味して舐め腐っている。
(ああ、そうさ。力だろうと体力だろうと知力だろうと、アンタの方が上だ)
憎らしい事に、ヤツの言う通り僕は凡人の域を出ない。奇策なんて、思いつかない。
でも僕自身の才能や力でコイツを超える必要は無い。
ほんの少し、特別な力があれば。
「ッくそ！！」
力や怒り任せにバッグをぶん回した。だがひょいと避けられ、むしろ遠心力により僕が振り回され、バッグを離して飛ばしてしまう。
「…苦肉の策でそれかい？もう万事は休したのか」
(ハッ…これでいいんだよ)
呆れたアルマの声が失望の念を物語る。が、今のは本命じゃない。バッグにしまったスマホの通話口向こうの、安室さんを守る為だった。
急速に息を吸った。肺は薬品の独特な匂いのこもった空気で溜まった。アルマは未だサーカスで最前列で何事かとはしゃぐ子どものように、僕の行動を面白がっている。
(コレは嫌悪してたけど――…)
今は僕の味方をしてくれ、神サマ。
「――この世界は、漫画なんだ」
世界にとっての禁句を吐いた。この世界の住人は誰も得てはならない世界の本質を。
今までに伝えた者は全員、僕の意志に関わらず眠ってきた。どんなに能力があろうと、結局は眠る。
そう思っていた。
「ああ、そうなんだ？やっぱり」
面白い世界だね、なんて呑気に笑うアルマはどう刮目しても意識を保っている。今まで、瞠目しては無慈悲に平等に意識を睡魔の底へ誘った筈の、僕に憑いた神サマの能力。
それが何故か、効かなかった。
「…何をそんなに驚いているんだい？ああ、もしかして俺がそう予想していた事かい？」
「――な、んで…、お前…寝ないんだ…？」
「寝ない？」
何故、どうしてと思考がぐるぐると巡る。絶対眠るという予想は、僕の発言で考え込むアルマに裏切られた。
「――ああ、成程。阿鳥宗一くんやバーボンの紹介した拷問官が寝たのは、ひょっとして今の言葉のせいかい？」
そうしてタネは、あっさりと割られた。
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想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
