最悪の邂逅−�� ページ13
「！灰原ちゃん、隠れよう…！」
物音がした訳じゃない。誰かの声が聞こえた訳でも無い。ただ、第六感のような何かが人の存在を感知していた。…ついに視線の察知だけでなく、人の気配まで察知出来るようになったか？
戸惑う灰原ちゃんの手を引いて、並ぶ薬品棚の影に隠れる。入り口からは見えない位置に移動し、安室さんの話し声が聞こえぬよう携帯の音は切ってバッグにしまった。
過ぎるかとも願ったが、思いは裏切られて扉が開く。
(隠れてて良かった…)
物陰から息をひそめ、突然の来訪者が過ぎ去るのを待つ。
ポツリと呟かれたその声は、
「――おかしいね」
僕らの背筋を凍らせるのに、十分だった。
「どうして勝手に電気がついているんだろうね？」
(ッ！)
心臓を物理的に鷲掴みされたかのような、血管をせき止められる感情に身体が強張る。
心臓にすら嫌に響く、身体の傷や節々が過去の拷問をなぞるかのごとく痛みを想起させる低いこの声は、間違いなく――…
ただひたすら時と奴が過ぎ去るのを待つ。ぶわりと自分の産毛が逆立っている事にすら自覚出来る余力は無かった。
(落ち着け…落ち着け！)
隣の灰原ちゃんは組織のニオイの強さに怯えてるのか、心配そうに瞳を揺らした。
奴――アルマはカツカツと靴音を響かせる。怪物の足音は意地悪く心臓の鼓動を速めた。
ピタリと、足音が止んだ。
(…諦めてそのまま引き返して、)
「いるんだろ」
確信を得た声色は僕の恐怖の核心を突く。咄嗟にバッグから銃を取り出し、棚の陰から顔を出して声の方向へ撃った。
「――やっぱりだ」
子どものような無邪気さがはらんだ愉快そうな声が耳にへばりつく。銃声より印象に残った嫌なその声に苦痛のうめきは無い。鳴った音は、ただガラスの瓶が割れる音だった。
アルマは何事も無く僕に笑いかけていた。
「君達を誘拐したハズの男が、地下の駐車場で情けなくも拘束されていたのを見つけてね。探したよ」
「逃げろ、灰原ちゃんッ！！」
傍らで隠れていた灰原ちゃんに叫ぶ。僕の剣幕に彼女はうろたえたが、その刹那に銃声が響いた。
その乾いた発砲音は、僕の物じゃなかった。
「ぅぐッ…！？」
「…一発程度なら、射線が分かれば銃は対処出来るよ。つくづく甘い男だね、君は」
ポタポタと鮮血が滴り落ちる。激痛の走った右手に持っていた筈の銃は、あまりの衝撃で弾き落とされた。
アルマの手には、硝煙を吐く銃がこちらに向いていた。それで僕の銃を持つ手を撃たれたのだった。
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想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
