恐怖を押し殺して−�� ページ12
「あ、灰原ちゃん、言って欲しいセリフあるんだけど良い？」
「こんな時に？」
「隠れてる間、暇だろ？」
下手に外に出るわけにもいかないしな。僕の提案に呆れた彼女は、溜息を吐いた。
「…まあそれで貴方の気が紛れるというのなら、構わないけれど」
「はは…バレてた？」
「そんなに震えていて、怖いと思っていないワケないでしょ」
情けなくも無様に過去のトラウマを思い出して震える指先を見やる彼女は、先程の雰囲気が壊されたにも関わらず仕方なさげに承諾してくれた。
「"私は死なないわ。貴方が守るもの"って言って欲しいんだけど」
「なんかそのセリフは癪だから却下よ」
「何でよレイちゃん」
「誰がレイちゃんよ」
声繋がりで言って欲しかったんだけどなー…ま、断られたんならしょーがない。
「…ここ、妙に空調が効いてると思ったら…薬品庫か何か？」
「そうみたいだね。この建物の地図でも無いかなーってワンチャンかけて探したけど、ものの見事に全部何かの化学物質ばっか。灰原ちゃん、見て分かる？」
「分かるには分かるけれど…貴方は下手に触らない方が良いわよ」
「…仮に誰かが来た時用の撃退方としては？」
「私達まで巻き込まれても良いのなら、毒性ガスや煙を作ったり出来るけれど。皮膚に害のある液体をかけたとしても、撃退は厳しいわ」
「ならやめた方が良いか…」
助けが来ると言うのに毒のある気体をばら撒いたのなら、救出に支障が出る。やはり大人しく助けを待つ事しか出来ないのだろうか。
(折角手に入れた硝酸アンモニウム水溶液とか、ヒドラジンは…使わないかもな)
使わないに越した事は無いから、機会が無いのならそれで良いが。
…それとも付け焼き刃くらいにしかならないが、銃やスタンガンで対処するか。近接ならばスタンガン、遠ければ銃で。
………。
妙に胸騒ぎがする。
(いつもの強迫観念…だと良いんだけど)
それらのほとんどは杞憂だ。たまに当たる心配事もあるが、滅多に無い。
けれど今回のは気色が違う。まるで、既にもう取り返しがつかないような…そんな、じっとりとした嫌な予感。
(ほんっと、メンタルきちーぜ…)
傍らには灰原ちゃん、手に持ったスマホからは安室の声がしたとしても、僕は完全に安心し切る事が出来ないのだった。むしろ時間が経てば経つ程に、心配は恐怖へ変換されて身体を蝕み続ける。
そうして心配に囚われていると、杞憂は杞憂では無くなる。
部屋の外から人の気配がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
