抵抗のアイロニー ページ30
倉間には二つ誤算が生じた。
まずはアストロライトの威力だ。彼の手に入れた硝酸アンモニウム水溶液とヒドラジンは、片手で持てる程度の大きさの瓶に入っており、その二つを合わせた所で大した爆発にはならない。精々、ハロウィンの花嫁に登場した首輪爆弾よりやや爆発範囲が広くなるくらいだ。
室内にいた人間は無事に済む事はあるまい。しかし、倉間はアルマを盾にすれば死ぬ事は無いと考えていた。アストロライト入りのバッグと倉間の間に挟まるように、アルマは立っていたのだから。
倉間の考えはおおよそ合っていた。
――場所さえ悪くなければ。
ここは薬品庫。ヒドラジンのように引火性のある危険な液体や、硝酸アンモニウムのように爆発性の伴う物質まで揃っている。無知な倉間は焦りもあってか、手にした物品と同じくらい危険な物がここには揃っていることを失念していた。
薬品庫は盛大に爆発した。建物を大きく揺らす程の爆発力と爆速で。その上、辺りに有毒なガスをばら撒いて。
だがそれでも、本来であれば倉間は助かった。倉間ももし己が爆発の威力を見誤っても、またアルマに殺されそうになっても"死なない"という予想があった。
倉間は学生時代に絶死の崖から落ちた時、そして巨大な観覧車に轢かれた時、奇跡の生還を果たしている。普通であればあり得ない、超常現象とも呼ぶべき"奇跡"が起きていた。
その奇跡の理由は、倉間に憑いている神サマだった。
倉間は奇妙なことが起これば一度目の偶然は偶然と捉えるが、二度目の偶然は奇跡か必然と考える。そして奇跡の生還も、二度目までもし神サマが人為的に起こした必然であるならば、三度目も四度目も必然的に助けてくれるだろうという推測が倉間にはあった。その予想は当たりだ。
神サマはいつだって、倉間が死にかけると"奇跡"で助ける。
だが神サマは何故か倉間が特定の事を口にすると、それにより知った者は昏睡させる呪いをかけていた。しかしその呪いは、魔女である小泉紅子が倉間に渡した人形により無効化されるようになった。
同時に、神サマの"奇跡"も無効化されるようになった。
――神サマの"奇跡"は呪いだった。
だから人形は、それすら無効化してしまった。
神サマは手も足も出せなくなった。
倉間が何を言っても誰かを呪って眠らせることは無くなった。
しかし倉間が死にかけても、"奇跡"を起こすことは叶わなくなった。
――――要は、神サマは倉間遥斗を助けられなかった。
偽造されたレゾンデートル−�、�←Crow is over.
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想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
