最悪の邂逅−�� ページ16
「俺に拷問されて、いっそ死んだ方がマシだと思うくらいには追い詰められて、解放されたと思ったらまた見つかって誘拐されて、こうしてまた追い詰められて…それでもなお反撃に立ち向かおうとする事の出来る人間が、一体この世にどれほどいる？」
「知りたくも、ねぇな…！テメェの趣味なんかッ！」
悪趣味に唾を吐く。鳩尾にも響いたのか、すぐに立ち上がる事は出来なかった。
「やめてッ！」
「…邪魔だな」
灰原ちゃんの悲鳴にも似た叫びが響いた。が、アルマは底冷えする声で一蹴する。人を人とも思わぬ視線が、灰原ちゃんに刺さる。
「灰原ちゃん、には…手を出すな…！」
この怪物のような男に、灰原ちゃんへ手出しさせてはならない。
死にたい程の日々を耐えれたのは、灰原ちゃんのお陰でもある。希望と言い換えても良い。彼女がいなければ、今頃僕は廃人か死人の二択だろう。
彼女の瞳に影が差す事があってはならない。無駄な足掻きだと理解してもなお、惨めにもアルマの足首を掴んで進行を妨害する。その甲斐あってか、アルマは動きを止めた。
「そんなにシェリーが大事かい？」
「アンタには一生分かんねぇよ」
侮蔑の念をたっぷり込めて返してやった。僕の回答につまらなさそうに、奴は大きく息を吐いた。
「――ああ、そうか」
一人でに得心したような声が、頭上から降りかかった。
「遥斗、良い提案があるんだ。君が俺に頷いてくれるのなら、この場では彼女を逃がしてやっても良いよ」
「それは…！」
「シェリー、君は口出しをしないでくれ」
懐にしまっていたアルマの銃が灰原ちゃんに向き、彼女は開いた口を閉ざした。息を飲んだ灰原ちゃんは、声を出さずにその場に立ちすくむ。
「さぁ遥斗、選ぶんだ。これは最後の慈悲だよ。君が大人しく俺についてきてくれれば、彼女から手を引こう。君にもう前のような痛い思いだって、君次第ではしないさ。…どうだい？」
アルマはしゃがんで僕に甘美にささやいた。甘言は絶望の中の希望のようだった。
「――本当に？」
「本当だとも」
「遥斗さ――」
「しぃー…だよ、シェリー」
再度警告を突きつけるよう、銃口が灰原ちゃんの額に向く。言葉を封じられた灰原ちゃんは、仕方なく口をつぐんだ。
気持ち悪い程に虫の良すぎる提案だった。けど、絶望に溺れかけている僕は、藁のような光にすがらないという選択肢は思いつかなかった。
「――分かったから、彼女は見逃してくれ…」
震えた唇から、僕は懇願の言を紡いだ。
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想世(プロフ) - みそらーめんさん» コメントありがとうございます。元ネタはとあるボカロ曲ですね。応援もありがたいです、色々と落ち着いたら更新頑張りたいと思います。 (2023年1月22日 9時) (
レス) @page46 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
みそらーめん - 元ネタの元ネタが人間失格、、、！何となく分かるような、、、？この作品、大好きです。体には気をつけて更新頑張ってください。 (2023年1月22日 8時) (レス) @page47 id: c05dcaa337 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 早桃さん» コメントありがとうございます。気に入って頂けたのなら何よりです。これからも更新頑張らせて頂きます。 (2022年12月18日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - やばいめっちゃ好き、、、！面白すぎて一気に読んじゃいました！！独特な世界観が個人的にツボです笑 これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してますぅぅぅ！大好き！ (2022年12月18日 17時) (レス) id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - せいあさん» 再度コメントありがとうございます。自分でも驚きですが、名残惜しくも次作で本編完結となります。どうぞ最後まで楽しんで頂けると幸いです。 (2022年12月1日 21時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年12月1日 18時
