すがるは信頼と「――」−�� ページ9
「待ってろ、今すぐは難しいが必ず――…」
「……いや…安室、さん」
彼は重そうに頭を上げた。首とボロボロのハイネックの隙間から傷が見え、その痛ましさに顔をしかめる。
「ぼく、なら…大丈夫。絶対に、何も言わないし、……いちお、…脱出は、出来なくはない」
「何を言ってるんだ、君はもうボロボロで――…」
「はは……へーき、へーき」
力無く笑った彼は誰がどう見ても明らかに無理をしていた。
(大丈夫な訳が無いだろう。…ウソをつく時の笑いだ)
いつもウソを吐く時、彼は口角を無理に上げて笑っている。それが作り笑いだろうと、愛想笑いだろうと、何だろうと。
「手足、さえ…なんとか、なれば、…すぐにでも、」
要は拘束具が邪魔なのだろう。だが仮に拘束具を外したとて、今の彼に走れる程の体力があるとは思えない。ましてや何日も拘束されたのだから、自由に動けまい。アルマがいる時なんかは特に、逃げ切れるとは思えない。
「手足さえなんとかなれば、君は脱出出来るんだな？」
僕の問いに、彼は確かに頷いた。
「…遥斗さん、もう少しだけ耐えられるか？」
二回目の問いにも、遥斗さんは微かに遅れて、それでも確かに首肯する。…一体どういう方法を取るか分からないが、彼に秘策があると言うのなら、それを信じてみたい。彼が僕を信じたように。
アルマが電話を終えたのか、帰ってきた。何やら話し込んでいた様子の僕達に何かあったのかと尋ねたが、他愛も無い世間話とでも返しておいた。
「へぇ…？まあいいか。それじゃあ俺の気も済んだし、帰っていいよ、バーボン」
「試すだけ試して後は帰すんですか、随分と身勝手ですね。貴方、組織ではそんなワガママが許される程に立場はありました？」
――アルマという男は、酒の名前こそもらえど、その地位は組織に所属していた年月の割に低い。その理由は、組織内でも秘匿とされている。
「俺が求めるのはレッテルばかりの価値や肩書きじゃない。それは欲しい物を手に入れやすくする為の手段に過ぎない。…俺は、ある程度は好きにさせてもらうよ」
「随分と横暴な方だ…足元を掬われても、知りませんよ」
「その時はその時さ」
軽薄に笑うアルマが忌々しかった。アルマに見送られる形で、地下室を出た。最後に一瞬だけ遥斗さんを見れば、一気に喋って疲れたのか脱力して目も伏せていた。
(お膳立てはする。保険も用意しておく。だから…)
――必ず無事に出るんだ、遥斗さん。
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想世(プロフ) - ﾁｯｽﾁｯｽさん» 毎度コメントありがとうございます。感動してもらえたのなら何よりです。これからも更新頑張らせていただきます。 (2022年11月11日 16時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ﾁｯｽﾁｯｽ - うわぁぁぁあああ！！最近見れてなくてすみません！久しぶりに見て感動しました、、、。これからも更新頑張ってくダセェ(๑･̑◡･̑๑) (2022年11月10日 10時) (レス) @page12 id: 3b27f251de (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - ばってんさん» 再びコメントありがとうございます。次作はそう遠くない内の制作を予定していますので、続きもどうぞよろしくお願いします。 (2022年11月7日 23時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ばってん(プロフ) - 続き楽しみにまってます！！ᕙ( ˙꒳˙ )ᕗ (2022年11月7日 21時) (レス) @page49 id: 33b58415e3 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - ﾁｯｽﾁｯｽさん» 毎度コメントありがとうございます。毎回本シリーズを見つけて読んで頂き、とても嬉しいです。ご自分のペースでどうぞ泡沫編もよろしくお願いします。 (2022年10月25日 15時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年10月21日 15時
