「後は君だけなのに」−�� ページ39
「悪いんだけど、僕は死なないよ。どれだけ死にたがったとしても」
立ち上がって、目の前の包帯だらけの病院着の男に笑った。うろたえた彼は、後退りをする。
「死にたくない理由がほんのちょっとしか無くて、生きたくない理由ばかりあっても、お前は自分勝手に死ねやしないよ」
「ふざけんな。死んだ方が楽なのは、お前だって分かってんだろ」
「生憎と、僕が死んだら悲しむ人間がいるもんだから」
「そんなの、放っておけよ…どうせ死んだ後の事なんか、どうでもいいだろ。人は死んだら、その人はそこで終わりなんだから」
「それこそクズ野郎だろうがよ」
包帯男の胸ぐらを掴む。弱々しそうに、"ぼく"は僕から視線を逸らした。
「なぁ、どうしてお前は死にたがりつつも、今まで生きていたんだ？自分の人生を終わらせる事は意外と簡単なんてのは、知ってんだろ」
「…」
「あいつらに救われちゃったから、そうそう死ぬ訳にはいかなかったんだよ」
「…分かってるさ」
現実逃避をずっと続けていた、忌まわしき過去。"漫画の世界なんだからどうだっていい"なんて思ってた、馬鹿な
「新一くんが教えてくれた。ここは現実でもあるって。そこで僕はようやく、夢から覚めた」
「…そうだね」
「馬鹿だよ、本当に。この世界の誰も彼もが、顔も知らねぇ創造主に踊らされてるなんて思い込んでた。だって、漫画だ。創作物だ。作者がいて、僕もそいつの好きなように扱われてるんだって考えて、僕は思考を止めた」
「…でも、違った」
「みんな生きてる。誰かの意思じゃなくて、自分の意思で。お前が馬鹿だっただけだ！」
箱の中に僕の声が響く。激情を抑えるように手を離せば、"ぼく"は力無く地面にへこたれた。
「漫画に載ってた彼らと現実の彼らは、全くの別モンだ。だから、関わる度にお前はちゃんと現実を認識出来るようになった。…あいつらには感謝してるんだ」
「そうだね。漫画とは違う彼らは更に眩しくて、流石のぼくも目が覚めちゃった」
「ああ。それにここが漫画の世界だって思えば、誰かの知らない意思で生きてるって思えば、"じゃあ宗一もそのせいで殺されたのか？"って責任転嫁したくなっちまう」
「それは宗一に悪いよね。だって悪いのは、居もしないその存在のせいじゃないんだから」
「そう」
息を吐いて、"ぼく"と同じく床に座った。うなだれる"ぼく"に、静かに告げた。
「だからあいつらには、それを気付かせてくれた大きな借りがあるんだ」
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想世(プロフ) - ﾁｯｽﾁｯｽさん» 毎度コメントありがとうございます。感動してもらえたのなら何よりです。これからも更新頑張らせていただきます。 (2022年11月11日 16時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ﾁｯｽﾁｯｽ - うわぁぁぁあああ！！最近見れてなくてすみません！久しぶりに見て感動しました、、、。これからも更新頑張ってくダセェ(๑･̑◡･̑๑) (2022年11月10日 10時) (レス) @page12 id: 3b27f251de (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - ばってんさん» 再びコメントありがとうございます。次作はそう遠くない内の制作を予定していますので、続きもどうぞよろしくお願いします。 (2022年11月7日 23時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ばってん(プロフ) - 続き楽しみにまってます！！ᕙ( ˙꒳˙ )ᕗ (2022年11月7日 21時) (レス) @page49 id: 33b58415e3 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - ﾁｯｽﾁｯｽさん» 毎度コメントありがとうございます。毎回本シリーズを見つけて読んで頂き、とても嬉しいです。ご自分のペースでどうぞ泡沫編もよろしくお願いします。 (2022年10月25日 15時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年10月21日 15時
