呪いの旋律−�� ページ23
『ハル、死んじゃうの？』
(うん、もう、楽になりたい)
倉間は生気の無い目で、虚ろに返す。
『痛いもんね、苦しいもんね、辛いもんね、悲しいもんね。仕方ないよ、ハル』
(…だろ？ぼくもう、頑張ったよ。頑張って、耐えたよ)
安室がバーボンとして来て、銃を倉間に向けた時の事。倉間はあの時、希望を持っていた。死ねるという微かな希望の光を。
(本当は、ぼくの為にも死にたかった。…でも、死ねなかったや)
『でも今はもう、引き金を引くだけで死ねちゃうね』
(うん)
倉間は安らかな心で愛の幻聴に返した。これでようやく、なんて微かに笑った時だった。
『じゃあ、君が死ぬと悲しむ子は悲しんじゃうけど、ハルの方が苦しかったんだもん。仕方ないよね』
引き金に手をかけて力を込めようとした時、倉間は愛の言葉で止まる。
『ハルのお友達、ハルが死んだらすっごく悲しむだろうなぁ。あ、コナン君が言ってたよね。"灰原も後を追いかねない"なんて』
(そ、れは、)
『"何で助けてあげられなかったんだろう"なんてずっとずーっと悲しんで、この先一生後悔して、悲しみを背負い続けるだろうね。ハルみたいに』
途端に倉間は恐怖した。手が震え、その拍子に銃を落とす。幸いにも銃は暴発しなかった。
(でも、本当はウソの可能性だって、)
『あの子があんなウソを吐く人間だと思う？』
(灰原ちゃんがそうだとは、限らないし)
『あの子もハルの事好きそうだし、もしかするよ』
倉間は一生背負う事の重さを、10年程の経験で身に染みている。それを思い出せば、倉間はまともに呼吸も出来なくなった。
『君が生きようと思ってた理由は、なぁに？』
(――悲しませたく、なかったから。そうだ…彼らにあんな思いをさせたくなかったから。ぼくみたいになって欲しく、なかったから)
『そうだね。不用意にも、仲良くなっちゃったんだもん。もう戻れないよね、お互いに』
倉間は壁を伝って、よろよろと動く。死にたいという気持ちも、楽になりたいという感情も、何一つ変わりは無い。
だが"生きなければならない"という使命感が、倉間の中で芽生える。
それは薬のようで、実の所毒であるにも関わらず。
(ぼくのせいで、ぼくが原因で、ぼくが最初からいなければ、ぼくで悲しむ事も無かったのに。…ああ、いっそぼくの帰りなんて待ってくれなければ、いいのになぁ)
拷問から解放されたというのに、倉間の心は救われなかった。
心だけは解放されなかった。
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想世(プロフ) - ﾁｯｽﾁｯｽさん» 毎度コメントありがとうございます。感動してもらえたのなら何よりです。これからも更新頑張らせていただきます。 (2022年11月11日 16時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ﾁｯｽﾁｯｽ - うわぁぁぁあああ！！最近見れてなくてすみません！久しぶりに見て感動しました、、、。これからも更新頑張ってくダセェ(๑･̑◡･̑๑) (2022年11月10日 10時) (レス) @page12 id: 3b27f251de (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - ばってんさん» 再びコメントありがとうございます。次作はそう遠くない内の制作を予定していますので、続きもどうぞよろしくお願いします。 (2022年11月7日 23時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ばってん(プロフ) - 続き楽しみにまってます！！ᕙ( ˙꒳˙ )ᕗ (2022年11月7日 21時) (レス) @page49 id: 33b58415e3 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - ﾁｯｽﾁｯｽさん» 毎度コメントありがとうございます。毎回本シリーズを見つけて読んで頂き、とても嬉しいです。ご自分のペースでどうぞ泡沫編もよろしくお願いします。 (2022年10月25日 15時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年10月21日 15時
