悪魔は笑う−�� ページ18
その日のアルマの拷問は優しかった。ただし頭に、"いつもよりは"が付く。
「…ぉ゛、え…」
倉間の生命線である、飲まされた経口補水液すら吐きそうになる。今彼の頭の中にあるのは、先程怪物に見せられた動画だった。
(母、さん)
音が無くとも、身振り手振りでアルマに泣き叫んで抵抗しているのは痛い程伝わった。動画は途中までしか見ていなかった。倉間には、見られなかった。
画面の中の遥子は何本も指を折られ、ぐちゃぐちゃに泣いた。画面の中のアルマは時折カメラの方を見て、笑顔で手を振ってた。
(どこまでも、クソ野郎だな…ッ)
倉間を煽るように作られた動画は、確かに倉間にしっかりとダメージを入れた。
『君のせいだよ、遥斗？』
(――ぼくの、せい)
アルマの言葉が
(母さんが傷付いたのは、ぼくのせい…？ぼくが心を折れかけたから、アイツは母さんに手を出したのか…？)
怪物の言葉は、しっかりと倉間の脳内に刻み込まれてしまった。
倉間には酷く聞き馴染みのある言葉でもあった。
『ハル…？』
(なぁ愛、否定してくれ…全部ぼくのせいなのか？)
『…そんな事無いよ』
(きみを殺した事も、おばさんがぼくの首を絞めて病んでしまった事も、ぼくが引きこもるようになって母さんにたくさん迷惑をかけてしまった事も、東都での初めての友達…親友すらも何年も眠らせてしまった事も、多くの人の命を自分の都合で見捨ててしまった事も、こうしてぼくがあの男に好き勝手になぶられる事も、母さんが傷付いてボロボロに泣かせてしまった事も、ぼくのせいでは無いと？)
幻聴は何も言わなかった。
代わりに倉間の目の前には、長い濡れ鴉色の髪を揺らして、白いワンピースを着て静かに笑う、昔のまんまの村瀬愛がいた。
(……愛)
その姿を幻視して、倉間も微かに口角を上げた。上げた頬は、震えて引きつっていた。
(ねぇ、ぼくってやっぱり、生きてるだけで周りを不幸にする人間なのかなぁ)
いつか、倉間が誰かに言った言葉を繰り返した。彼が薄々思っていた事だった。
『大丈夫、大丈夫、ハル』
倉間の幻覚の村瀬愛は倉間に笑いかける。
『ハルはいっぱい頑張ったよ。いっぱい罪を背負ったよ。それはよく私が知ってるから。だからもう、楽になって良いんだよ』
(…早く、なりたいな。もう、楽に)
この地下室には倉間以外、人はいない。
だが倉間は、都合の良い存在に笑いかけて、彼女の言葉に頷いた。
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想世(プロフ) - ﾁｯｽﾁｯｽさん» 毎度コメントありがとうございます。感動してもらえたのなら何よりです。これからも更新頑張らせていただきます。 (2022年11月11日 16時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ﾁｯｽﾁｯｽ - うわぁぁぁあああ！！最近見れてなくてすみません！久しぶりに見て感動しました、、、。これからも更新頑張ってくダセェ(๑･̑◡･̑๑) (2022年11月10日 10時) (レス) @page12 id: 3b27f251de (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - ばってんさん» 再びコメントありがとうございます。次作はそう遠くない内の制作を予定していますので、続きもどうぞよろしくお願いします。 (2022年11月7日 23時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ばってん(プロフ) - 続き楽しみにまってます！！ᕙ( ˙꒳˙ )ᕗ (2022年11月7日 21時) (レス) @page49 id: 33b58415e3 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - ﾁｯｽﾁｯｽさん» 毎度コメントありがとうございます。毎回本シリーズを見つけて読んで頂き、とても嬉しいです。ご自分のペースでどうぞ泡沫編もよろしくお願いします。 (2022年10月25日 15時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年10月21日 15時
