20◇嘘 ページ21
この国の冬は寒い。
11月の半ば。
ひどく寒いと思ったら、歩いている途中にひらひらと白い雪が降り始めた。
ほぅ、と白い息が漏れる。
息してるんだ。わたし。
と実感する。
なんで息してるんだろう、わたし。
なんで生きなきゃいけないんだろう、わたし。
会いたい。たまらなく会いたい。
じんわりと。涙が浮かぶ。
最近涙腺が壊れてしまった。
病院の先生が「いっぱいいっぱいなんでしょう」と言った。
…………もう、重いよ。
これはわたし、抱えられない。
潰れてしまった。全部。いっぱいいっぱい。
多分そう。
「悪くないよ」って「苦しいね」って。
「大好きだよ」って。
言ってよ。抱きしめてよ。もっともっと。一緒にいてよ。
「テヒョンア…………」
車通りの多い場所に向かいながら、呟いた時。
「なに？」
後ろから聞こえた声にわたしは面白いほどのスピードで振り返って。
そこに立っていたのは間違いなく愛おしくて、会いたくて会いたくてたまらなかったその人で。
「て、………ひょん…………？」
ひらひらと雪が舞う中。その人はあまりに美しくて。
「テヒョン………！」
テヒョンが死んだのは夢？
全部全部悪い夢？
そうでしょ、だって、彼は目の前にいるんだもん。
走り寄ったわたしは、テヒョンに触れようとして、その手は空を切った。
「なんで………？」
「Aも分かってるよね」
死んだんだから、触れないよ。
本人の口から出た言葉に。
都合のいい事は何もないんだと思い知らされる。
「暫くの間。Aの側にいる事にした」
触れなくていいって思った。
テヒョンが近くにいてくれるなら、それで。
「けど、条件がある」
あとからわかった事だけど、テヒョンはきっとわたしが憎かった訳でも、嫌いになったわけでも。悲しませたかったわけでも。なんでもなくて。
ただ。
ちゃんと好きでいてくれて。愛してくれていて。わたしと違って前を向いていて。
後ろばかり見る、そんなわたしがちゃんと生きられる様に。彼がいなくとも。
踏み出せる様に。
後退しないように。
あの態度も、あの言葉も、全部全部。
「別れよっか」
彼のついた、最後の嘘だった。
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ミサモ - いい話でした!(泣)もう感動しすぎて涙がでました(泣)こんなすんばらしい話僕は思いつきません。素晴らしい話をありがとうございます(*⌒▽⌒*) (2020年1月1日 20時) (
レス) id: 592a6abe49 (このIDを非表示/違反報告)
しろい(プロフ) - さっちゃんさん» さっちゃんさん〜！！お久しぶりです！ぴんぴんしてます〜(*^^*)久しぶりに文字を書いたので我ながら下手になったなと思いましたがそう言って頂けてちょっと安心です！さっちゃんさんに2019が終わる前に会えてしろいも幸せです(*´`*)全部うれしい… (2019年12月31日 9時) (レス) id: c91a121712 (このIDを非表示/違反報告)
しろい(プロフ) - あがしおんさん» ありがとうなんてとんでもないです…！こちらこそ読んで頂きコメントまで感謝しかないです。どんなに苦しくても時間がかかっても何処かで前を向けたらいいな、って思います。 (2019年12月31日 9時) (レス) id: c91a121712 (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - しろいさん！お久しぶりです(^^)お元気でしたか？？またこうやってお話を読む事が出来て幸せいっぱいです(;;)このお話初っ端から悲しすぎたんですが、最後まで胸が締め付けられる感じでした…でもやっぱりしろいさんっぽい！お話の書き方大好きです(泣) (2019年12月30日 23時) (レス) id: 77a52bcd61 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - 心に染みるお話でした。この世界で巡るものすべて有限なのですから、あまりすがり過ぎてもいけませんね。素敵なお話ありがとうございました！ (2019年12月30日 20時) (レス) id: 97c4c54377 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雪
| 作成日時：2019年12月27日 12時
