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「あとさ、宏太。俺、いつ彼女ができたわけ？」
穏やかになりつつあった空気の中、ふいに、ウソツキさんが不機嫌な声で兄ちゃんに尋ねる。
「は？」
「この人に言っただろ、なんか変なこと」
「あぁ、だって、今まで三十分前にはバイトに来てたのに最近ぎりぎりに来るし、この前なんでか聞いたら、“可愛いネコと会ってる”って言ったじゃん、伊野尾。
それって、彼女じゃねーの？」
これには、俺のみならずウソツキさんも絶句してしまった。
「それ……私のこと？」
「はあっ？」
ポソッと言った俺に、今度は兄ちゃんが噛みついてくる。
「なに？お前ら、どういう仲なの？
たまたま会って、傘を貸したってだけじゃないわけ？」
自分の下唇をつまみ、なにも言わないウソツキさん。
ちょっとだけバツが悪そうだ。
どうやら兄ちゃんには、俺達が頻繁に会っていたことを言ってなかったみたいだ。
「そういえば、宏太は“伊野尾の家に、涼介くんが傘を返しにきた”って俺から聞いて、初めて会ってるって知ったのよね？
とっくに慧本人から宏太に話しているもんだと思ってたけど」
光さんも便乗する。
ウソツキさんはしれっとした顔をして、なにも言わない。
「伊野尾、お前まさか、涼介になんか変なこと……」
「宏太も同棲していることを俺に口止めしてたんだから、おあいこだろうが」
「ぐ」
兄ちゃんとウソツキさんが言い合いをしているこの状況に、俺はなんだかふきだしそうになってしまった。
ふたりが友達だったなんて、いまだに信じられない。
「あとさ、俺の卒論についても、いい加減な情報流さないでくれる？」
「俺はべつに、変なこと言ってねーよ」
「俺の論文、確かに“暗示”についてだけど、睡眠暗示についてであって、過去の実験データから拾って考察するだけの論文だし。
お前の勘違いが弟にも伝染してんじゃねーか」
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作者名：ぴよ | 作成日時：2020年9月29日 12時
