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「あのさ、俺、すっごく考えた上で言ってるんだけど」
「信じないっ!」
思わず力んで大きな声が出た。
膝の上のカバンをぎゅっと握る。
胸の痛みが最大になって、それを吐きだすように続ける。
「言葉でだったら、どうとでも言えます。
俺ひとりをだますことくらい、ウソツキさんにとっては簡単なことなんだから」
傷つくくらいなら、信じない。
これ以上裏切られるのはもう嫌だ。
自分の下手な期待に振り回されて、最後にやっぱり傷つくのは、もうこりごりなんだ。
「直接触れて態度で示せないんだから、言葉以外に道具がないだろうが」
「聞きましたっ、やっぱり彼女いるって。
チョコレートも、あれもただの研究材料で私を利用してただけなんでしょ?
ウソツキさんにとって俺は、簡単に騙せるような単純な子どもだったんだっ」
勢い余って立ちあがり、その場で地団太を踏みながら声を荒らげる。
同時に涙もボロボロ落ちてきて、一気に苦しさが胸に充満した。
嗚咽でむせてしまうも、涙も鼻水も止まらない。
ウソツキさんは、口を真一文字に結んだ不機嫌そうな顔でフェンスに寄りかかったまま、しばらく黙っていた。
そして、ゆっくりと一点を見つめて伏せていた目をあげ、
「……宏太?」
低い、今までで一番低い声で聞いてきた。
「宏太がそう言ったの?」
ウソツキさんのオーラがあまりにも怖くて若干たじろいだ俺は、涙を垂らしたままで静かにうなずく。
それを確認するや否や、ウソツキさんは、フェンスからこちらにツカツカと歩みよってきた。
そして、いきなり俺の腕をつかみ、扉のほうへ引っぱる。
「なっ、なにするんですか? どこにっ……」
「三○二号室」
「なんで、兄ちゃんの部屋に」
「頭きた。もう、直接見て確かめろ」
「なにを?」
「うるさい」
屋上の扉を勢いよく開け、階段を早足でおり、エレベーターを呼ぶための下の矢印ボタンを強く押すウソツキさん。
眉間のシワがものすごく深い。
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作者名:ぴよ | 作成日時:2020年9月29日 12時