検索窓
今日:11 hit、昨日:0 hit、合計:61,173 hit

ページ16











“原因も話したいんなら聞くけど”


別の時にウソツキさんが言った言葉もよみがえる。

いや、話していない。

あの時、俺はそのまま原因をなにも説明しなかった。

有岡くんにメールを見られたことを話した時も、そこまで掘りさげては話さなかったし。


――コンコン。

「わっ!」




ただでさえ動悸が激しくなっていたところにノックの音が聞こえ、咄嗟に驚きの声をあげる。




「あ、ごめん。びっくりさせちゃった?俺だけど」




カチャリとドアが開く。兄ちゃんがひょっこり顔を覗かせた。




「なんだ、兄ちゃん。今日はこっちで食べるの?」




またもや考えごとに浸りすぎて、兄ちゃんが家に来ていることに気付かなかった。




「ああ、今日はバイト休みだから」




兄ちゃんはにっこり笑う。

その顔を見てつられて微笑んだけれど、胸の奥にはモヤモヤした灰色のなにかが残ったままだった。


やがて、母さんが帰ってきて、三人で食卓を囲む。

やはり、ふたりで食べるよりも三人で食べるほうがいい。

俺は先ほどの疑問をとりあえず頭の隅に追いやって、家族との会話を楽しんだ。




「あー、お腹いっぱい」




「お風呂も入って帰れば?」




「んー、どうしよっかなー」




リビングで兄ちゃんとテレビを見ながら他愛もない話をする。

母さんはキッチンで鼻歌を歌いながら皿を洗っていた。




「そういえば、涼介、チョコの暴食はちゃんとやめたか?」




「あぁ、うん。もう大丈夫だよ」




「心配させるなよ。なにか悩みがあるなら、ちゃんと外に出すこと。俺も母さんもいるんだし」




ハハ、と笑う俺。

今は聞いてくれる友達がいるんだよ、と心の中で思った。

それに、ウソツキさんも……。

そこまで考えて、思わず心と頭にブレーキをかける。









・→←・



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (142 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
521人がお気に入り
設定タグ:山田涼介 , 伊野尾慧 , いのやま   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぴよ | 作成日時:2020年9月29日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。