59.嘘つきVS嘘つき…kazu ページ30
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改札口。あぁ、確かここでAを抱きしめた。
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昨夜、Aと別れたばっかなのに、それすらも愛おしくなってしまうのは如何なものか。
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郊外の駅だから、通勤ラッシュはあるものの都心の駅ほどそんなハードなもんではなくて。
せいぜい、少し狭いかな？って程度なわけで。こういう時は郊外に住んでて良かった。って思う。
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ノセをきちんと埋葬してきてから、数十分。
きちんと、白黒つけなきゃならない。奏美か、Aか。
じゃないと、前に進めない。
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頭ん中がそろそろキャパオーバーになっちまう。って頃
立って黄色い線の内側で電車を待っている俺の目の前に、一本前の電車が止まる。
この電車は俺が勤めてる会社とは違う方向に行く電車だから興味ない。
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俺はそう決めつけて、目線をそのまま手中にあるスマホへと向ける。
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和也「…めんどくせぇ…」
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もうそろそろ俺も充電切れなんじゃねぇか。って思いながら
アナウンスが流れて、電車の扉が閉まりますって声に何気なく顔を上げる。
…上げる、と。
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和也「…A？」
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扉の隣の、すぐ近くの座席に座ってる男女。窓越しに見える2人の仲の良さ。
Aは昨日、俺の部屋に来たまんまの格好をしていてそれは即ち朝帰りってことを意味する。
その隣の男は…、見覚えがある。
…昨日、奏美の知り合いだとかなんとか言ってた男。
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なんでそのツーショットなんだよ。
俺の頭が追いつかねぇって。もうパンクするって。
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プシュー…。って音がして、目の前の電車の扉が閉まる。
そして、見事な速さで俺を電車の風が切る。
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電車の速さってのは、まあ、それは凄い速くて。Aたちが乗ってた車両は
ものすごい速さで俺を横切っていって。残ったのは、後味の悪さ。
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あぁ…、ほんともう…。めんどくせぇ…。なんで会社と反対方向の電車に乗ってんだよ。
なんで、俺のこと好きなんじゃねぇのかよ。
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俺は心の中でそう呟いて
動揺した自分の気持ちを隠したいがために、最近封印していた煙草に火をつけた。
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