嘘つきロマンチカ Part2【K.N】 (ページ24)

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53.Help me ページ24

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何時間ぐらいそうしていただろうか。

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玄関の扉に凭れかかり、座り込んで、もう何時間が経った？

分からない。ただただ、唯一の小さな細い糸が切れて

もう会社でもただの『同じ会社の人』ってだけになるなんて、私にはまだ信じられなくて。

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いつもなら家に帰ってすぐに浴びるシャワーも。いつも冷蔵庫を開けて缶ビールを飲み干すのも。

録り溜めていた録画番組を見るのも。友達にLINEを返すことだって。

全部が全部、なんだかめんどくさくなっちゃって。なんならこのまま寝ちゃおうか。なんて言う考えまで出てきちゃって

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そんな放心状態の時だった。

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ヴー…。ヴー…。って私のパーカーのポケットに入れておいたスマホが振動していて

もしかしたら。って言う淡い小さなあり得ない期待を抱いて、それはもう光の速さでそれを取り出して

真っ暗な暗闇の中、不気味に光り出すその液晶画面に映っていた着信相手は。

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智『…あ。やっと出たー。もーすっげぇ連絡したのにさぁ。出ねぇんだもんなぁ。事故ったのかと思っちゃったもん、俺』

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スマホを耳に当てるのも、もう億劫でスピーカモードにしたもんだから

私のこの真っ暗な部屋に、温かい色が滲み出てる智くんの声が響き渡って

それが余計に、私の胸を軋ませて。

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私の意思とは正反対に、滲む景色を智くんには気づかれたくなくて

唇を必死に噛み締めて、唸り声を我慢していると

…怖いことに、智くんは。

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智『…A？泣いてんのか？』

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なんて言うから。

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その何気ない言葉が、部屋に木霊して

私の何かを保っていた、何かの糸がぷつん。と切れてしまって

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「さとし…っくん、」

智『A？どーした』

「たすけて」

智『へっ？』

「おねがい、たすけてっ………」

智『……』

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私は。

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智『待っててな。ぶっ飛んでく』

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私は、彼の優しさに縋った。

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