49.名前の由来 ページ20
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ハァハァ。と色んなものが床に散乱してる部屋に
いい歳した大人男女2人が、言い合いだけで息を切らして互いを睨み付ける。
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…と言う図は、あまりにも滑稽すぎる。
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「も…、なんなの…。なんでもする、って言ったけど結婚は無理ですから」
和也「あー…、ひっさびさに口喧嘩した」
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私も二宮さんも。かれこれ15分程度の口喧嘩を織り成して
もうさすがに疲れ果ててしまって、散乱している床の唯一地べたに座れるスペースに腰を下ろして
お互いの背中を背もたれにして、私は体育座り、二宮さんは胡座でその場に座り込む。
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なんだろう。なんだろう、このあったかいポカポカした気持ち。
二宮さんの背中の温度が、ちょうど心地いいのは、なんでだろう。
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和也「…ねえ」
「……はい？」
和也「由来。教えてあげようか」
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二宮さんはそう背中を揺らして笑うと、んふふ、って「アナタの名前」って小さく呟く。
え？なに？って目をぱちくりさせると、「自分の名字、反復してみ」って
二宮さんは振り向かずに、それだけを言って背中を丸める。
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名字…？
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「瀬野…？せの、せの、セノ、セノ、セノセノセノ…。……ノセ」
和也「んふふ」
「え……」
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私が上手く状況を読み込めなくて、ただただウロウロと目を泳がせていると
急に背中に伝わっていた温度がなくなったかと思ったら、二宮さんが立ち上がって
すぐ近くにあった水槽の中を覗いて、ツンツン、と指で水槽越しに金魚の腹をつつく。
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和也「なあ、ノセ。俺ね、セノの片割れが好きだったんだ。知ってる？」
「……？」
和也「今も好き。今ここにいる瀬野を見つけた時、セノを見つけたみたいにバカみたいに喜んだ」
「……」
和也「でもね、なんでだろね。俺、セノが1番好きだけど、ノセも、瀬野も。全部欲しいって思っちゃってんの」
「……」
和也「３つも欲しがるって、俺、相当な遊び人なんかなぁ」
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二宮さんは、少し虚ろげな目で
『そんなん知らないよ』って知らんぷりの顔で泳ぎ続けるノセを眺めた。
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