43.ミネラルウォーター ページ14
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「…じゃあ、ここで」
翔「うん。気をつけて」
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…少しだけ。少しだけ、櫻井さんに淹れてもらったコーヒーを飲んで。お話したら
少しだけだけど、なんだか気持ちが落ち着いて。ゴチャゴチャだったものが片付いた気がして。
もう遅いし帰ろうか、ってなって、会社を出たら土砂降りだった雨は上がっていて。
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櫻井さんの家は反対方向なはずなのに、夜遅いし駅まで送るよ、なんてもう王子様か。って突っ込んじゃいたくなるぐらいな言葉を言ってくれて。
私はその言葉に甘えて、駅まで送ってもらった。
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櫻井さんの去っていく背中が消えるまで見送ると、私は見慣れたいつもの改札口へと向かう。
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…そうだ。ここで、確か前は。二宮さんが追いかけてきてくれて
抱きしめられたんだっけ…。
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なんだか結構最近のことなはずなのに、随分前のことに思えるのはなんでだろう。
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ピッ。と定期を当てる音がして、改札口が開く。
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ここら辺は郊外に当たるので、そんな都市のような夜遅くでも人がギュウギュウ詰め。なんてことは無くて
比較的チラホラ…。としか人の影は見えなくて
前は都市に住んでいたから、そこら辺はものすごく助かるし、楽だ。
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いつものペースで、静かな駅内にカツカツ、と言うヒールの音を響かせて
ホームに向かう途中、何人かとすれ違ったけれど皆、スマホを弄っていたから目は合わなかった。
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ホームに降りる階段の前の自販機で1番安いミネラルウォーターを買って
キャップを思い切り力を入れて、空けて、階段を降りながら飲む。
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そんな呑気なことをしていたら、ホームには私が乗る電車が既に止まっていて。
慌てて階段を下って、キャップが途中、走った勢いでどっかへ飛んで行ったけど、まあ、どうでもいい。
いや、どうでもよくはないんだけれど。
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「うわーっ、待って待って！」
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急いで、でも転ばないように。ホームを駆けて
勢いよく、電車の中へと転がり込む。
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「よかったぁ…」
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そっと胸を撫で下ろすと、持っていたミネラルウォーターが走った勢いで半分減っていて。
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全然良くなんかない。
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