40.マトリョーシカ ページ11
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あまりにも優しすぎるその問いかけに
私はスカートをギュウ…。と握りしめて、こくん…とただただ頷く。
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私がそう頷けば、櫻井さんはふぅー…って肩に入っていた力を抜くように、息を吐いて
それまで前のめりだった体制から、ぼすん。と背中をソファの背もたれに預けて天井を仰いだ。
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お互い何も言わず、ただ沈黙が雪のように積もる。
微かに私の耳を掠めるのは、チッ…チッ…。って言う壁掛時計の秒針の音だけ。
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翔「…そっか。ニノかあ…」
「……」
翔「ねえAちゃん」
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翔「ぶっちゃけ、Aちゃんって瀬野奏美のお姉さんだよね？」
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いつの間にか体制が前のめりに戻っていた櫻井さんを、私は思わず見返した。
「なんで…。」って、か細い頼り甲斐もない、そんな声を絞り出すと
櫻井さんは、ふっ…。と意味深な笑みを浮かべて、膝の上で両手を絡めた。
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翔「やっぱしか。なんで知ってるのかって言うと、部長のデスクの上に大分前、履歴書が置いてあったのを見ただけなんだけど」
「……」
翔「…もしかして、瀬野奏美とニノ。出くわしちゃった？」
「……はい」
翔「そっか。…そっか」
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それはマズイなぁ、って勝手に自分の中で完結しちゃってる櫻井さん。
それからうんうん、って頷きながらちょっと温くなってるだろう、残りのコーヒーを啜って
ほっと一息。
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それから何か言ってくれるのかな、って期待してみたはいいものの
一切櫻井さんは私に話しかけることもなく、1人、心の中で色々葛藤し始めてしまった。
…さすがにこれは耐えられない。
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「……ぁの…」
翔「ぅーん…。やっぱり…うん…」
「あの……」
翔「瀬野と……」
「あのっ！」
翔「うおっ、ビックリしたぁ……」
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櫻井さんには本当にどうやら声は聞こえていなかったらしく
いきなり耳に入ってきた私の大声に気づいて、マトリョーシカみたいな顔になっちゃってる。
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「……あの」
翔「うん？」
「…奏美。とあの人は…何があった…んですか」
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私がそう意を決して訊ねたその質問に
櫻井さんは困ったように笑った。
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