嘘コク野郎を落とす方法5【桃】

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机から吉野めがけて飛び降りると、共に床に倒れ込んだ。


「A逃げろ！」


体勢を整える間もなく、Aに向かって言う。


その時左頬に激痛が走った。


口の中に血の味が広がり、吉野に殴られたことに気づく。


「莉犬！」


殴られた音に気づいたAが足を止めて俺の名を呼ぶ。


俺のことなんていいから、早く逃げてくれ。


「いいから早く逃げろ」


ありったけの声を上げて叫ぶが、吉野と目があったAは恐怖からか一歩も動けなくなっていた。


その時、教室のもう一つの扉が開いた。


「Aちゃん！」


教室に駆け込んできたさとみがAの腕を引き、背中に隠すように立つ。


「さとみ！ やれっ！」


俺の掛け声と同時にさとみは思いっきり足を上げると、吉野の顔目掛けて蹴りを繰り出した。


それは見事に吉野の顎に命中し、そのまま気を失って倒れ込む。


顎が人の急所って本当なんだな……。


そんなことを考えながら、俺は手で口元の血を拭うと吉野をベルトで縛り上げた。


Aを見るとさとみの背中にしがみつくように小さくなっている。


悔しいけどここはさとみに任せた方がいいだろう。


ずっとずっと心の中で大切にしてきた俺のお姫様。
彼女が求めた王子様は俺じゃなかった……。


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