五十四話 ページ7
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side 紫
片付けも終わって、ソファにふたり並んで座る。
…どうしよう。手料理食べたいとは言ったけど、食べた後のこと考えてへんかった。
『…怜さんは、どう思います?さっきの料理。改めて』
「改めて、めっちゃ美味かった。文句なし。春巻も天ぷらも油っこくなくて食べやすかったし、店で金払ってでも食べたいですね。」
『良かった…、不安だったんだ、口に合わなかったらって…』
料理は好きだけど、自分で考えた事はなかったから。
旦那さんに教えてもらったり、レシピ本読んだり、料理として完成されてる物のコピーしか作ったことがない。
これで考えたものが食べられたものじゃなかったら…
俯いてそう言いながら小さく震えていくAさんの声。
俺は思わず震えている小さな肩を引き寄せて抱きしめた。
「俺は、Aさんの飯食ってる時、幸せやったよ。この飯を毎日食える奴が居ったら、そいつは幸せもんやな、羨ましいわって、思ってん。」
腕の中で、小さく鼻をすする音が聞こえる。
そこでふと思い出し、一度Aさんから離れて荷物の中から小さな袋を取り出してまたソファに戻った。
「…前に遊んだ時、雑貨屋行ったやろ。そこでこれ見付けて、一目惚れしてん。…Aさんに似合うやろなって。」
紫色の花のモチーフがついた小さなイヤリング。タグにはアスターと書かれていた記憶がある。
顔を上げて、袋を受け取るとイヤリングを取り出す。
「安もんやけど、貰ってほしい。」
「俺、好きなんや。…Aさんのことが、好きです。」
驚いた顔で、涙を目いっぱいに溜めながら俺を見つめる。
「…俺はまだ、Aさんの過去とか、鈴木課長みたいには知らんけど。これから知っていきたいと思うし、俺の事ももっと知ってほしい。」
「返事は、今すぐにとは言わん、から。」
『ありがとう。凄く嬉しい。…でも、少し、時間をください。』
『次にふたりで会う時、必ず返事するから。』
「うん、時間かけて、ゆっくり考えて。」
今日はもう帰るね、料理の感想ありがとう、と言ってAさんは帰っていった。
…こんな、急に
もっとちゃんと時間かけて、もっと仲良くなってから言おうと思ってたんに。
三回デートして、手料理食わせてもらったら、脈はあると信じたい。
Aさんの過去がどんなやったかまだわからんけど
どんな過去でも、信じて話してくれるかな。
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まうる - トンママがトンママしとる......... (2019年9月9日 2時) (レス) id: a48c43d4d7 (このIDを非表示/違反報告)
yanochin(プロフ) - 和夢さん» コメントありがとうございます!一応次のお話で書くつもりですが、本人から辛いから聞いて知ってる感じです!童貞のはずなのに完全にママで性別が迷子です! (2019年6月7日 22時) (レス) id: 2c796d6a97 (このIDを非表示/違反報告)
和夢 - トントン…最初に女の子の日って気付くなんてお前童貞やないのか!? (2019年6月7日 17時) (レス) id: 926cbb72e4 (このIDを非表示/違反報告)
yanochin(プロフ) - 黒月(ブラックムーン)さん» 全然大丈夫ですよ!体も負担かからない程度に頑張ります。ありがとうございます! (2019年6月1日 3時) (レス) id: 2c796d6a97 (このIDを非表示/違反報告)
黒月(ブラックムーン)(プロフ) - yanochinさん» 今改めて自分の文面見たんですけどうるさいですね...。更新頑張って欲しいですけど、体壊す人も居るみたいなんで無理しないようにしてくださいね~ (2019年5月31日 22時) (レス) id: 75155c2af0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yanochin | 作成日時:2019年5月27日 20時