【wrwrd】新メンバーに騙されてた件について。�供�syp.all】

六十一話 ページ14

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side 紫



気が付いたら家に居た。

帰ってくるまでの記憶が曖昧にしか残っとらん。

…この状態でよく事故らず帰ってこれたな俺



確か、メンバー皆で集まって飯食って、途中でグルさんと一緒にAさんが来た。


…そうや、Aさん。
マナブさんが来るって聞いとったけどAさんが来たんや。

自分が、マナブだと言って。
マナブとして皆と通話してる時の声が本当の自分の声だと言って。
…つまり、普段俺と話してる声は、作られた声、だということ。


仕事中の落ち着いた声も、ゲームしている楽しそうな声も、猫と戯れて溶けた声も。

怒った声も、拗ねた声も、心配そうな声も。


触れた時の恥ずかしそうな声も。


褒めた時の照れた声も。


抱きしめた時の泣いた声も。


告白した時の、嬉しそうな声も。



昨日まで俺が聞いてた声は、全部偽物の声やった。


…ショックや。こんなに好きなのに、Aさんの本当の声さえ知らなかった事が。教えてもらえなかった事が。

高かろうが低かろうが、Aさん自身は何も変わらないわけで。


俺はまだ、何も知らない。
彼女が何故偽物の声で生活し、何を感じているのか。

鈴木課長には話したんに、俺には話せないんか？
それほど、信頼されてないのか俺は。


少しは近付けたと思っとったけど。
…自意識過剰やった？

手料理食べさせてもらえる仲になったと。
…ただの客で、ただの試食会？

何とも思ってない男の部屋に入るのかと。
…試食会する為に、自分の部屋には上げられないから？





でも、俺の渡したイヤリング、着けてくれてた。

髪の隙間から、チラっとしか見えんかったけど、確かに着けてた。

今日は俺が居ると思ってなかったはず。
何とも思ってない男から貰ったアクセサリーを、本人が居らんとわかってる時に着けていくのか。

…着けてかん、よな？


ブランド物だったらまぁわからんでもない、けど、ただの雑貨屋の安物や。



イヤリングも、お揃いのふたつのキーホルダーも、ちゃんと着けてくれてた。

これは、紛れもない事実。









…俺は、Aさんの性格が好きや。
声も好きやけど、それは付加価値でしかない。

中身を、好きになったんや。


告白して後悔もしとらん。

あとは、Aさんの言葉を待つだけ。







　

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