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１０（Kiside） ページ10
太輔のいなくなったベンチをそっと手でなぞる
まだ温もりの残ったその場所を動けないでいた
太輔の残していった温もりに触れた手を真っ青な空にかざしてみる
それは…涙が出そうなくらい美しい青で…
濁ってしまった俺の心には、羨ましいくらい眩しかった
大きな空の真ん中でキラキラと輝く太陽はそれ以上に眩しくて…
「太輔…」
無意識に君の名前を呟いていた
太輔はいつも眩しいくらいの笑顔で俺を見ていた
『宏光、好きだよ！』
いつも隣でそう言ってくれた君の笑顔と甘い声には、破壊的な力があって
俺はそれらに出会う度、胸が壊されそうなくらいドキドキさせられた
太輔…
俺を見つめるその顔に8年前の笑顔はなかったけれど
その声は…前と変わらず俺の心臓を激しく動かしたよ
もう…
使いもんにならなくなりそうな、こんな弱い俺の心臓ですら
懸命に俺の気持ちを教えてくれた
今も変わらず、太輔の事が好きだって…
本当は…
太輔とまた出会えた事
運命だって思いたかった
太輔の胸に飛び込みたかった
だけど…
太輔の胸に飛び込んでしまえば
また太輔を苦しめる事になるから
俺にはそれは出来ないよ
悲しくて苦しい別れは1度きりの方が良いだろ？
次の別れは
もう二度とこうして出会う事のない…
永遠の別れ
俺は空に恋するかごの中の鳥でいいんだ…
.
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作者名：MISA
| 作成日時：2015年5月31日 21時
