嘘つきな君へ (ページ9)

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９（Kiside）ページ9

ギラギラと照りつける太陽

目の前で俺を見つめる太輔は、俺の前ではしゃいでいた８年前の面影は消えて

すっかり大人の表情に変わっていた

少しこけた頬

短く切った髪…

俺がいなくなった後

どんな生活を送ってきたのか

もう俺が想像することも出来ないくらいに大人になっていた

ただ、時折見せる優しい眼差しは、あの頃と全く変わらなくて

あぁ、目の前にいるのは本物の太輔なんだと実感させる

「どうして、」「どうして…？」と繰り返す太輔に

何と答えていいか分からずに、俺はただ

「ごめんな…」

そう謝る事しかできなかった

「謝って欲しい訳じゃないんだよ…？」

そう寂しげに言った太輔に

本当の事は…やっぱり言えなかった

「ごめん…」

泣きそうな顔で俺をじっと見つめた太輔は、諦めたように少し俯いた後

「いつ…退院するの？」

目を合わすことなく、そう聞いてきた

「……まだ分かんない。」

「……また…会いたい」

なんでそんな事言うんだよ

俺は…お前から逃げた人間なんだぞ

「もう…ここには来るな。」

「……どうして…？」

太輔の声が震えていた

「俺達の関係はもう終わったんだよ。……あれから8年も経ってる…。」

「そうだけど…でも、俺はずっと…！」

「太輔。お前にはお前の今の生活があるだろ？俺にも今の生活がある。…もう…あの頃には戻れないよ。それに…俺はお前から逃げたんだよ。」

「逃げた…。俺と…一緒にいたくなかったの…？」

そんな訳ない

俺はお前と…

「そうだよ。お前と一緒に居たくなかったから…お前の前から…」

「止めてよ。…嘘でしょ？」

「嘘じゃ…ない…」

「……じゃあ、なんで…泣いてるの…？」

もう…限界だった

「お願い…もう…ここには来ないで…」

太輔は込み上げる涙に声を詰まらせると

「…っ…。……わかった…」

小さく呟き、ふらりと立ち上がった

「……ごめんね、宏光。」

ゆっくりと去って行く太輔の背中をずっと見ていた

今なら…

『太輔』と大きな声で叫んで呼び止める事が出来たら…

またあの頃に戻れるだろうか

涙を拭う事も出来ないまま、太輔の背中は俺の今から…消えた

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