４０（Yside） ページ40
「宏光、あそこから俺達の事見てるかな…」
太輔が眩しそうに空を見上げる
「渉といたら、また宏光、俺達の事勘違いしちゃうね(笑)」
宏光との最後の別れ
太輔は全てを受け止めたみたいに、涙を流すことはなかった
分かってたよ、ミツは全部
俺と太輔が付き合っていない事も
太輔が自分の病気に気付いている事も…
全部分かってて…
太輔が悲しまないように…
太輔が自分のいない人生に苦しまないように
分からない振りしたまま逝ったんだ
互いを想って嘘をつき通した二人の生き方…
周りはきっと「不器用だ」とか「バカだ」って言うだろうけど…
俺は凄いって思ってるよ
本当の愛を間近で見た気がしてる
2人とも互いを想い、騙し騙される事が幸せだと信じた
偉大な愛だよ
「渉、俺ね、宏光の嘘に付き合って良かったって思ってんだ。」
「太輔…」
「もし、本当の事を宏光に打ち明けられてたら…多分、俺、宏光とあんなに楽しい思い出作れなかったと思う。宏光の事死なせたくなくて…宏光のやりたい事も、止めてたかもしれない。」
ミツ、ミツの想い、ちゃんと太輔に届いてたよ
ミツは太輔の中にあった8年前の心のしこりをちゃんと消し去って、綺麗な思い出でいっぱいにして逝った
「俺、ちゃんと宏光の事愛せてたかな…。俺の気持ち…ちゃんと宏光に伝わってたかな…」
「伝わってたよ。ミツも、太輔を愛してたから…」
だからこそ…ミツは最後に一番大きな嘘をついたんだ…
『横尾さん、俺ね、ホントは俺の事太輔に忘れて欲しくない。ずっと俺だけ愛してって言いたい。でも…太輔には幸せになって欲しいから…。ちゃんと新しい人生を自分の脚で踏み出して欲しいから…。この想いは、隠したまま逝くよ。』
ミツの、『横尾さんとこに戻れ』って言葉は
俺に後は任せたって言葉…
大丈夫だよ、ミツ
ずっと太輔を見てきたんだ
またミツと出会った時に…
『ありがと、横尾さん』って
あの最高の笑顔で言って貰える自信はあるよ
「あっ！渉、虹が出てる！」
眩しい程の笑顔で虹を指差す太輔に自然に笑みが浮かんだ
空と大地を繋ぐ輝く虹は、ミツと俺達の想いを繋ぐ架け橋
ミツ、太輔の笑顔見えてるか？
今度ミツに会う時まで
俺がちゃんと守って行くから
だからそこで見守ってて
そして太輔を包んでいて
ミツのその広くて大きな優しい光で…
END
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作者名：MISA
| 作成日時：2015年5月31日 21時
