嘘つきな君へ (ページ39)

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３９（Fside）ページ39

「…今、お母さん、こっちに向かってるから。」

到着した病院ですぐに処置を受けた宏光

今は、俺が宏光に再開したあの真っ白な病室のベッドに横たわっている

駆けつけてくれた渉が、何もできない俺に変わって手続きや連絡を済ませてくれた

「眠ってるみたいだね…。ミツ…微笑んでるよ。」

まだ少しぬくもりの残った頬を渉がそっと撫でる

「ミツ……っつ……」

渉の頬を伝う幾筋もの涙

俺は…不思議と涙は出なかった

一緒に暮らしている間、何度も宏光がいなくなる事を想像して、涙を止められなかったのに…

「渉…。宏光がさ、渉の所に戻れって…」

「え…？」

「渉なら、俺を幸せにしてくれるって」

「……」

「宏光、俺と渉が付き合ってるって、ずっと思い違いしてたのかな…？」

「太輔…」

宏光は俺といて、幸せだったかな…

何度も『愛してる』って伝えた想いは、ちゃんと宏光に届いてたかな…

「宏光…。俺が愛してるのは宏光だけだよ…？宏光は…俺を愛してくれてたんだよね…？」

宏光も…何度も俺に『愛してるよ』って伝えてくれた

俺は、この先もずっと宏光のその言葉を胸に生きていくよ

宏光の分まで…

「無理させたのは、俺の方だね…。いっぱいいっぱい苦しかったでしょ？でも、もう苦しくないよ。」

穏やかに眠る宏光に、もう苦しみが訪れないように…

「まだまだ、2人で行きたかった所、たくさん残ってるね。これから、また一緒に行こうか。俺が宏光を連れて行くよ。」

俺達の夢はまだ続くよ

その夢を途切れさせたりしないから…

「宏光…愛してるよ…。これからもずっと…。」

俺の傍にいて…

『俺は太輔の傍を離れたりしないから』

今にも動き出しそうな唇に、そっと唇を重ねた時

俺はやっと…

涙を流すことが出来た

「…ありがとう……宏光…」

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