嘘つきな君へ (ページ38)

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３８（Fside）ページ38

着いたアパート

部屋に入ると、胸を押さえて床に倒れている宏光がいた

「宏光っ！！！」

「…た…ぃ……」

宏光の息が…

「大丈夫、大丈夫だからな！」

ゆっくりと宏光の胸を擦りながら、意識がなくならないように声を掛けた

「たぃ…」

「ごめんな…1人にしてごめん…。不安だっただろ？」

「たぃ…はっ…んっ…」

「渉が救急車呼んでくれてる。もう少しの我慢だから。」

「はぁ…はぁ……たぃ…」

宏光が何度も俺を呼ぶ

「うん。ここにいるよ。分かる？」

差し出す手をぎゅっと握ると、宏光はほんの少し笑顔を見せた

聞こえてくる救急車のサイレン

「宏光、もうすぐ救急車がくる。すぐに苦しくなくなるからな。」

「…ぁ…ぃ…」

「宏光っ！頑張れっ！」

瞼を下ろしそうになる宏光に懸命に声を掛けると、宏光はまたゆっくりと瞼を上げる

「宏光…死ぬなよっ…。俺の為に…生きてっ…」

その瞬間俺を捉える宏光の瞳が、『生きたい』と叫ぶように揺れた

そして握りしめた俺の手をゆっくりと持ち上げ、手の甲にそっと口づけを落とした

「宏光…」

宏光の得意な口角を上げた笑み…

涙が溢れた

廊下からバタバタという足音が近づく

「ここですっ！！！早くっ！！！」

部屋に入ってきた隊員たちが宏光を囲む

「心臓に病気があるんです。かかりつけの病院は…」

運ばれていく間も、宏光は俺の手を握って離さなかった

救急車の中で酸素マスクを付けられてた宏光が懸命に口を開こうとする

「ん？何？」

口元に耳を近付けると

「たぃ…全部…知って…」

途切れ途切れに繋ぐ言葉

「…ごめん…全部知ってたよ…」

もう…隠すことなんてできない

素直に俺は、宏光に打ち明けた

宏光は力のない瞳を一度ゆっくりと閉じると、一筋の涙を目の端から流した

「ごめんね。黙ってて…」

「……ぁ…がと…な…。俺の…夢…付き、合っ…くれて…」

「宏光…」

違うよ宏光だけじゃない

俺の夢でもあったんだよ

２人だけの時間を過ごす事…

涙を拭いて伝えようとした時だった

「よこ…さんとこ…戻って…いい、から…」

「え…？」

「…しあ…せに…して…くれる…」

「宏光、何言って…！」

「いっ、ぱ……無理…せ…ごめ…。…あり…が…たい…す、け…」

「宏光っ！！！」

眠る様に目を閉じた宏光に最期の時は近付いていた

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