嘘つきな君へ (ページ36)

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３６（Yside）ページ36

「あれ？太輔は？」

ミツに呼び出されて来たファミレス

太輔も一緒だと思ってたのに、待っていたのはミツ一人だった

「高校時代の友達が東京に来てて、会いに行ってる。」

「そっか。」

ここのファミレスにはトラウマがある

そう、太輔に…ミツの事を伝えた場所

ミツの表情を見て、一気に不安が高まった

強張る頬を隠すようにメニューに目をやると

「横尾さん、俺ね、もう長くないと思う。今日横尾さんに会いに来たのは、太輔の事でお願いがあって…」

いきなりのミツの言葉にまたメニューを落しそうになる

「ちょ、ちょっと待って。いきなりどうしたの？何かあった？」

この間会った時には

『太輔と一緒にいると辛くない』

と言っていたミツ

この数週間で一体何が起こっているんだろう

「最近、発作が起きる回数が増えてる…」

「……医者には？」

「話してない。」

「どうして…！」

「話したら…病院に連れ戻される。」

そこまで…ミツの状態は悪くなっているの…？

その上で、病院に行かない事を選んだの…？

「ミツ…」

「ごめんね…」

もう…涙を止められなかった

ミツは…自分の死を覚悟して

最期まで太輔の傍にいる事を選んだんだ…

「…太輔は…」

「病気の事は気付いてると思う。相変わらず…何も言わないけど…」

まだ二人は互いの嘘を知りながら、騙されたフリをしている…

この期に及んで、それに…何の意味がある…？

お互いに苦しいだけなら、もう…

「俺の死を太輔には引きずって欲しくない。前みたいに…ダメになって欲しくないんだ。…俺の事、ちゃんと思い出にして欲しいから、太輔の所に戻ってきたんだ。」

「ミツ…」

「8年前の事、後悔してる。太輔の心にしこりを残すような別れ方した事…。だから…」

ミツの言葉に、涙が溢れた

「太輔に綺麗な思い出、沢山作ってやりたい。楽しい思い出で詰め尽くして、俺は最期の時を、太輔と目一杯生きたんだって、太輔に伝えたい。その為に…この嘘は必要なんだよ。」

俺の迷いを分かってるみたいに、ミツは最後の言葉を付け足した

ミツ…

きっと太輔も同じだよ

ミツの為に嘘を突き通してる

「横尾さん…。横尾さんなら…太輔の事…任せられる…。俺の大切な人だから…横尾さんに託したい」

不安気に揺れる瞳に

「分かった。ミツの想いは…ちゃんと受け取ったから…」

俺はそう答えていた

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