３５（Kiside） ページ35
限界が来てる…
そう思った
あのショッピングに行った日以来、度々小さな発作が起こっていた
「くっ……はっ…はっ…」
「宏光？どした？」
「何でも…ない…。ちょっと…トイレ…」
太輔の悲しそうな顔
見て、見ない振りをする
「大丈夫？」
太輔は不安げな顔で俺を見る事が増えた
「大丈夫だよ。ごめんな。心配掛けて…」
病気の事、もう隠し通せないかもしれない
「宏光…無理すんなよ。」
「え…？」
「…腹痛いんだろ？…ったく…また食い過ぎか？あ、それともなんか拾い食いした？」
「バカ、してねぇわっ！」
「じゃあ、あれだ！昨日腹出して寝てたからだ。ホント世話がやけるんだから…。ほら、大人しくソファで寝てな。」
腹の調子が悪いんだろって言いながら、優しく撫でてくれるのはいつも背中
俺の病気の事…もう太輔は気付いてる
気付いてて…気付かない振りをしてくれている
これ以上、太輔に知らない振りをさせる事が正しいのか…
それすら分からなくなる
ごめん、太輔…
俺はお前を苦しめてるか？
お前はどんな気持ちで俺の嘘に付き合ってくれている…？
「太輔…」
「ん？」
太輔の頬にそっと触れてみる
それは涙が溢れそうなくらい温かくて…
太輔の心が手を伝って流れてくるみたい
「どうしたの？宏光…？」
「…ありがとな。」
「ううん。…けど…最近お腹壊す事多いね。腹巻買いに行こうか。それとも毛糸のパンツが良い？(笑)」
「どっちもいらねぇ…。…太輔の……クラムチャウダーが飲みたい…」
「んふふ。分かった。それ飲んでお腹温めようね。」
太輔…俺がもし全てを打ち明けてしまったら
お前はどうする？
太輔の事だ
俺を心配して、何も出来なくなってしまうだろ？
それは嫌なんだ
太輔と一緒に出掛けて、太輔と一緒に美味い物食って
太輔と一緒に…
いつまでもバカみたいに笑っていたい
太輔が病気に気付いていながら、俺に本当の事を聞き出さないのは
俺と同じ気持ちだから…
俺はそう信じてる
勝手で本当にごめんな
俺の嘘に付き合ってくれてる優しい太輔に
甘えてる俺
もう少しだけ…
俺の我儘に付き合って…
.
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作者名：MISA
| 作成日時：2015年5月31日 21時
