３４（Fside） ページ34
キッチンで蹲る宏光を見て、一瞬息が出来なくなった
発作…
初めて見る宏光の苦しそうな姿に、思考が止まる
俺は…どうしたらいい…？
動けずにいる俺に、宏光がゆっくりと顔を上げた
「ちょ、っと…たち…くらみっ…」
必死に笑顔を作ろうとする宏光に、知らないフリを続けると決めたんだと思い出した
「……貧血かな…」
咄嗟に出た言葉
不自然じゃなかっただろうか…
「ホットタオル作って来るね。」
これで俺に隠れて薬飲めるかな…
タイミングを計りながら、ホットタオルを作って部屋に戻った
「宏光、入るよ」
恐る恐る寝室を覗く
ベッドの上で眠る宏光はもう苦しんではいなくて…
薬飲めたんだ…
そう思ってホッとした
「大丈夫？」
宏光の顔を覗き込むと、
「ごめん。ちょっとくらっときて…」
そう言って笑顔を作る
泣きそうになって、慌ててホットタオルを宏光の瞼の上に置いた
「気持ちいい…」
「そう？良かった。」
規則正しい穏やかな呼吸
それを聞くだけで安心する
「買い物行って疲れちゃったかな…。これからは、遠出は止めようね。」
「大丈夫だよ。たまたまだって。…また行こうよ。」
本当は怖いんだよ
宏光に無理させてんじゃないかって
「太輔…？…もう…俺と出掛けるの…嫌になった…？」
でも…
タオルを目から外して不安そうに俺を見つめる宏光にダメだなんて言えないよ…
「そんな事ないよ。また行こう。…でも…もう宏光、年なんだから、あんまりはしゃぐのは止めようね。」
「は？誰が年だ！俺はまだまだ若いんだーーー！」
「はいはい。興奮しない。また倒れるよ(笑)」
宏光の病気を知ってて知らない振りをする…
それは胸が張り裂けそうなくらい苦しかったりする
もっと宏光に手を差し伸べてやりたい
抱きしめて、大丈夫だよって伝えてやりたい
だけど…
こうやって笑いあえるなら…俺は嘘に付き合うよ
ねぇ、宏光…
俺は宏光が思うほど、もう弱くないよ
宏光の病気の事…受け止められるくらい俺、強くなったんだ
宏光の事、何も分からないままで探し続けたあの日々よりも
宏光がいつか俺の前からいなくなってしまう苦しみを抱えたままで宏光の傍にいる方が
ずっとずっと…幸せだって…そう感じているんだよ
.
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作者名：MISA
| 作成日時：2015年5月31日 21時
