嘘つきな君へ (ページ26)

今日:18 hit、昨日:7 hit、合計:166,203 hit

２６（Fside）ページ26

一緒に暮らし始めて気付く宏光の新たな一面

靴下は必ず右から履くとか

意外にも赤い色が好きだとか

ちょっとした癖とか…

クルクル変わる宏光の表情やちょっとした仕草に微笑んでしまう自分がいる

けれど、そんな中で気になる一面も…

必要以上に裸を隠したがったり

俺に隠れてこそこそと何かをしていたり…

一番気になるのは、ふと見せる寂しそうな表情

その表情の共通点を一生懸命探し出そうとするけれど、なかなか答えは見つからなくて

心の中のモヤモヤは消えないまま…

それでも、

宏光が傍にいてくれる、それ以上に幸せなことなんてないんだから、細かい事は気にしないでおこう

そう思っていたんだけれど…

宏光の留守中に、俺はついその答えを見つけてしまう

「あっ！牛乳切れてる…」

「あー！この間俺飲んだわ…。ごめん、すぐ買ってくる。」

「いいよ。俺が買って来る。新発売のアイス、ずっと気になってたんだよね～♪」

携帯と財布を握りしめて嬉しそうに部屋から出てくる宏光に

「…牛乳忘れんなよ。」

「んふふ♪太輔は、飯までに仕事終わる様に頑張れよ！」

「…」

「行ってきま～す♪」

玄関で宏光を見送り、リビングに戻る途中、半開きになっている寝室の扉が気になった

「もう。また開いてる(笑)」

いつも言ってるのに…

と扉に手を掛けた時、ふと宏光のバッグから見慣れない袋がはみ出しているのに気が付いた

人のバッグを勝手に開けるなんて、いけない事だと分かっていたけれど

少し見えるその白い袋に、嫌な予感がして自分の行動を止められなかった

カサッ…

鞄から少し引き出した時、見えたもの…

その白い袋には、薬局の名前と、俺達が再会した病院の名前が入っていた

中には数種類の薬と薬について書かれた添付文書

明らかに服用された形跡がある…

「なんだよ…これ…」

添付文書を震える手で開き読み進めると

そこには

『心臓』『発作』『副作用』…

恐ろしい言葉がいくつも並んでいた

病院で見た宏光の言動や気になっていた事全てが、繋がった気がした

「……ぁ…ぃや…宏光…」

手の震えが体中に広がっていく

見なければ良かった…

宏光は俺に本当の事を知られないように必死で隠してたんだ…

宏光の笑顔が不意に浮かんだ

もうすぐ宏光が帰ってくる

俺は涙を堪え、手にしたものを元の場所に戻してリビングに戻った

.