嘘つきな君へ (ページ21)

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２１（Kiside）ページ21

病院を出て、真っ直ぐにあのアパートに向かった

8年前俺が住んでいた場所

そして…今、太輔が住んでいる場所へ…

街の風景は随分と変わっていたけれど、アパートに近付くにつれ、見覚えのある風景が現れ始めた

まるで8年前にタイムスリップするみたいに…足を進める

辿り着いたアパートは、すっかり古くなって、ここだけは8年と言う月日を思わせた

ゆっくりと見上げ、太輔の部屋を見つめる

窓に映る太陽が、光を跳ね返して周りの景色を輝かせていた

手にしていた携帯を強く握りしめ、想いを込める

『変えてない』

横尾さんがそう言ってた番号を画面に呼び出し、通話のボタンを押した

耳に響く呼び出し音

回数を重ねる毎に、俺の心臓はコールのリズムを超えて高鳴った

数コール鳴った後、繋がった電話

『宏光っ！？』

太輔の声…

8年ぶりの…電話越しの太輔の声は、周りの音を遮ってダイレクトに俺の耳に響いた

「……たぃ…すけ…」

溢れそうな涙に声が震えた

『今どこっ！？』

「…アパートの…前…」

『え…？』

「太輔の…アパートの…」

言い終わる間もなく、太輔が窓を開ける音がする

再び見上げると

「宏光っ！！！」

光りの中から太輔が現れた

「太輔っ！！！」

思わず叫んだ

太輔が窓を開け放したまま、部屋の中へと消える

それを見て俺も、見慣れた階段へと走り出した

辿り着いた廊下の先、太輔が走ってくるのが見える

「宏光っ！」

「たい…っ…」

言い終わる前に思いっきり抱きしめられて、我慢していた涙が頬を流れ落ちた

「宏光だ…」

「うん。」

「帰ってきた…」

「うん。」

「…お帰り…。」

その一言に…

ずっと太輔が待っていてくれたんだと…

涙が溢れて止まらなかった

「…ただいま。太輔…」

やっと言えた

8年間、心の奥にしまっていた言葉を…

「またここに戻って来てもいい？俺…太輔の傍にいたい…」

そう言った俺の唇を太輔の唇が塞ぐ

「好きだよ…宏光…。もう一度会えたら伝えようって…ずっと思ってた…」

太輔の温もりが…凍りかけていた俺の心を溶かしていく

「俺も……大好き…。」

苦しいほどに再び抱きしめられた太輔の腕の中

「一緒に住もう。今日からここは、宏光と俺の…二人の家だよ…」

太輔の優しい声に安心するように、俺は体を太輔の胸に預けた

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