嘘つきな君へ (ページ19)

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１９（Kiside）ページ19

「先生…俺は、後、何年…生きられる？」

ここに来てからずっと俺を診てくれている担当医

「どうしたの？急に…」

一回り程しか違わない兄貴みたいな存在の先生…

「……ずっとね……会いたいって思ってた人に…偶然、会った…」

何でも言える…この病院で唯一俺の心の支えになってくれる人…

「……その人は…宏光くんの好きな人…？」

先生は太陽の光を背に受けながら、穏やかに微笑んだ

「…ずっと逃げてたんだ。病気の事、知られるのが怖くて…。だけど…」

「その人の所に、帰りたくなったんだね？」

先生の言葉に…小さく頷いた

「その人に再会してからずっと考えてた。生きてる意味って何だろうって…。ここにいれば、俺は長く生きられるかもしれない。けど…本当にそれって生きてるって言えるのかなって。やりたい事我慢して、傍にいたい人に嘘付いて…そこまでして、命、延ばす必要あるのかなって…」

先生の表情が悲しく曇る

けれど、俺はもう言葉を止める事が出来なかった

「ここが死んでるんだ…。短くてもちゃんと生きたいってここが叫んでんだよ…」

悲しくて泣いてるのか、悔しくて泣いてるのか

自分でも分からなかった

胸を叩きながら自分の想いをぶつけた時、先生が静かに口を開いた

「宏光くん、僕はね、これまで宏光くんみたいな患者を沢山見て来た。一秒でも長く生きていたいと言う人もいれば、宏光くんみたいに短くても後悔しない生き方をしたいって、ここを出て行った人もいる。」

遠くを見つめながらポツリポツリと話す先生

「患者さんの声に耳を傾ける度、何が正しいのか自分に問いかけてみた。けどね、人の生き方に正解なんてない。いや…その人が選んだなら、全てが正解なんだって…俺はそう思う。」

先生は俺の涙を指でそっと拭ってくれた

「俺は君の担当医だから、一分でも一秒でも長く生きられる方法を選択して欲しいと望む。でもね、1人の人間としては…宏光くんの気持ちを尊重したい。……宏光くんの思うままに生きればいい。」

「…」

「……この命は、宏光くんのものだよ。」

先生の言葉が俺の背中を押してくれた気がした

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