１６（Yside） ページ16
「俺ね、小さい時から心臓が弱くて…。」
ミツはまるで人生を振り返るみたいに、ポツリポツリと自分の事を話した
「大好きなサッカー辞めたのも…脚を怪我したからってのは嘘。本当は心臓が持たなくなったから。」
シーツを握り締め、悔しそうに
「今まではね、体の成長に合わせて人工弁を取りかえることで、何とか持たせてきたんだ。けど…もう…成長止まっちゃったしね。」
ふっと笑って、自嘲するみたいに
「もう手の施しようがないんだ…。心臓移植も…何年も待ってるけど…望めそうにないしね。」
自分の人生に絶望したみたいに
「どこの病院でもダメだって言われてさ。最後に拾ってくれたのが…ここだった。」
悲しみに耐えるみたいに…
「8年前も…大きな発作が起きたんだ。」
「ミツが…俺達の前からいなくなった時…？」
「うん。何とか自分で救急車呼んだけど、結構危なかったみたいで…親に1人暮らしを反対された。」
そんな事が起こってたなんて、俺も太輔も知らなかった
「せめて卒業までってお願いしたけど、医者にも入院しなきゃだめだって言われてさ。……諦めたんだ。」
「どうして言ってくれなかったの…？」
ずっと疑問に思ってた事…
「……言えないよ。言える訳ない…。ホントの事知ったら…俺と付き合うの、嫌になるだろ…？」
「そんな事…」
「だって、いつ死ぬか分かんないような奴…一緒にいるの怖いって…」
そう言ったミツの顔は…今までに見た事ないくらい、悲しみで曇っていた
きっと今まで沢山の友達から言われてきたんだろう…そう感じ取れた
「……俺達は違うよ？今までミツが出会ってきた奴とは違う。」
「え…」
「俺も太輔も、ミツが病気だからって離れたりしないよ。逆に今、どうしてもっと早く言ってくれなかったの？って…ミツの事怒鳴りたいくらいだよ。」
「横尾さん…」
「太輔も俺ももっとミツの傍でミツを支えたかった。ミツを1人で苦しめたくなかったよ。」
言い終わる間もなく涙を溢れさせたミツ
病気だけじゃない
人から与えられる辛さも、苦しさも…
ミツは沢山受けてきたんだ…
「ミツ…また…俺達の所に帰って来てくれないかな？」
ミツの迷いを…俺がなくしてやりたい
「太輔ね、毎日泣いてる。」
「……」
「太輔の笑顔を戻してやって欲しいんだ。」
それが出来るのは、ミツだけだから…
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作者名：MISA
| 作成日時：2015年5月31日 21時
