嘘つきな君へ (ページ1)

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１（Fside）ページ1

ひゅっと喉が音を立てた

目の前の光景に俺は呆然と立ちすくむ

冷たい壁に震える指を近付け

愛しい人の名前にそっと触れた時

俺の胸は苦しみに痛んだ

「嘘だろ…」

ずっとずっと探していた愛しい人

けれど、今は他人だと思いたかった

「宏光…」

小さくその名前を呼んだ時

「……たい…すけ…？」

俺の後ろで、声が聞こえた

忘れもしないその声

やっぱり君はここにいたんだね

この白い…無機質な部屋の中に…

「宏光…」

君は昔と変わらないアーモンド型の大きな瞳を見開いて、瞬きもせず俺を見つめる

「……どうして…ここに…」

しばらくの沈黙の後、絞り出す様に発した宏光の枯れた声

「…友達の…見舞いに…」

「………そっか…」

君は少し俯いて…

何かを思いめぐらすような表情をした後、意を決したように俺を見た

そして

「久しぶりだな、太輔。」

そう言ったんだ

久しぶりに見るその笑顔

くしゃっと目を細くして笑うその笑顔は昔とちっとも変らない

なのに…その顔色は青白く、表情も弱々しく見えた

「……お前……病気なのか…？」

聞きたくない

けれど、聞かなければこの胸のざわめきは静まらなかった

宏光はほんの少し哀しげに笑って

「……ちょっとね。…風邪拗らせちゃって。すぐに退院できるよ。」

そう言った

その笑顔が…

偽りの笑顔だったなんて、俺は…全然気付いてやれなかった

もし、あの時気付いていたら…

宏光との時間は…

もっと増えていたかもしれなかったのに…

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