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「幸村、戻ったぜよ。」
「あぁ、仁王。おかえり。
で、どうだった?」
背後から近付いた俺に驚きもせん、面白くないのう
「アイツは女子トイレで水遊びされたようじゃ。
ジャージだけ貸してそのまま帰らせたぜよ。」
「え、水遊び? ...そうかい。」
俺の比喩に一瞬躊躇うも、勘のいい幸村じゃ
すぐ理解した。
「困ったね。Aちゃんは大丈夫なのかい?」
手を顎に当てながら言う幸村にとりあえずは
とだけ返し、俺もラケットを持ちコートへ向かった
「これ以上エスカレートしなきゃいいけどなぁ...」
そんな幸村の独り言を盗み聞いて、俺はアップを始めた。
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私は仁王先輩の言葉に甘えて、あの後こっそり部室から荷物だけ取って帰路に着いている
取り敢えずヒロさんのところに行こう。
うーん、上は着替えを借りたけど下着が濡れてるから
やっぱり気持ち悪い…
ヒロさん所に着替えなんてないもんなぁ。
仕方ない、一回家から着替えを持って
ヒロさんの所に行こう…
私はくるっと体を反転して、来た道を少し戻った
「まだ寝てるよね?」
私は少し先から見える自分の家の窓を確認しつつ
だんだん足取りが重くなってるのをなんとなく感じた。
ガチャ、と慎重にドアノブを捻っても鳴るこの音
無音のドアノブとかないのかな。
いや、あったらそれはそれで怖いか
なんで自分の家にこんな気使わなきゃいけないんだろう…
最低限開けた扉からするっと体を滑らせて入り込む
リビングを見ると── …あの女が起きている
「最悪。」
小さく呟いた言葉は幸い聞こえてないようだった。
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作者名:1/4 | 作成日時:2021年8月7日 13時