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「私がその祖国だと言ったら、貴方はどうなさいますか」
どくり、と心臓が脈打つのを男は感じていた。
どこか特別な佇まいをした将官…いや、祖国は、男の反応を待つようにじっと見つめる。
これが自身の愛した祖国かと、そんなふうに男は思っていた。そして同時に、今話した事は目の前の彼に愛の告白をしたも同然では無いかと感じた。
だが実際、今の今まで愛していたものが突然現れたとして、どう行動すれば良いかなど男は分からなかった。
何かの感情から震える唇で、言葉を綴る事は難しかった。ただ喉の奥からひゅう、と音が漏れる。
「ぁ、っ、ずっと…お目にかかりたいと…そう…」
ようやく捻り出した言葉はそれだった。まだあとに続いて喋ろうとしていたが、それを祖国が遮った。
「思っていた通り、お可愛い方」
ふわりと微笑み、男の手を取る。
男の手は唇と同様に少し震え、汗が握られていた。それは夏の暑さからでは無く、緊張によるもの。
手袋越しに手を握った祖国にも、それは分かっていた。
自分が触れるだけでかっちりと固まり、身を震わせる彼はまるで小動物のよう。
そんな一時もすぐに終わった。男が手を引き抜いたのだ。何か大罪でも犯したような顔をして。
「どうしたんです？」
「い、いえ……私のような者が触れると…無礼かと…」
そんな声に思わず祖国は笑う。男は困惑して祖国の顔を見返した。
「私から触れたのですから、どうして貴方が無礼になるのです」
その顔に男は心を掴まれるような思いをしていた。それは国への愛と、祖国と名乗る男の美しさの両方から来ていた。
思えば、普通「私が祖国だ」と言われても、男は「不敬だ」と一蹴する筈。
だがその言葉を信じさせる何かがあった。
伏し目がちな瞳から発せられるその視線が、やけに痛く、熱く感じられる。
「ふふ。訓練、頑張って下さい」
そう言って祖国は立ち上がる。男はその背を追うような事はしなかった。だが、確かに彼がここに存在していたのだという事実を噛み締めていた。
「(美しい人だった)」
人、と形容していいのかは分からなかったが、とにかくそう感じていたのだ。
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凡夫(プロフ) - しょうゆだれさん» ありがとうございます！ゆるゆると更新していきますので是非とも見ていって下さい！ (2月8日 0時) (
レス) id: 4785ee1503 (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆだれ - あなたの書く小説が大好きです！これからも更新楽しみにしてます！ (2月4日 11時) (レス) id: cc28abac62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：凡夫 | 作成日時：2024年1月21日 0時
