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そう言って立ち去ろうとする男の腕を掴む。
驚いた男は将官の顔をまじまじと見つめてしまったが、無礼に当たるのではとすぐにやめる。
「私も、と言ったんです。貴方も居て下さい」
「し、然し…」
「貴方も暑かったのでしょう」
男の方に視線をやって来たので何事かと自分の姿を見る。
そこで男は気付いた。暑さから軍服の上を脱いでいたのだ。今は薄い下着一つ。
そりゃあ暑がりに見えるだろうと納得と同時に少し恥ずかしさを感じた。将官殿に恥を晒してしまった、と。
「ふふ、そこまで慌てなくても。こちらにありますよ」
将官は木陰に座り込み、近くに畳まれていた上着を指差す。丁寧に置かれたそれは、男の几帳面さを表している。
「……申し訳有りません。…失礼します」
将官の横に座る形になった。最も、少し距離を取ろうとすると彼が顔を見てくるのだ。
「何故こちらに来ないのか」とでも言いたげに。
そんな顔をされると男も断る事が出来ない。そもそも相手は自分より上だ、逆らうなど出来やしない。
暫く気まずい空気と汗が流れた後、将官が口を開く。
「貴方は、愛国心の強い人物だと聞きました。祖国に全てを捧げて進む人だと」
「……？はい」
突然振られた話に驚いたが、返事をした。確かに男は、きっての愛国心を持つ人物だと有名だった。
逃亡も、国への批判の一つも許さない。そのため将校達には嫌われている面もあったが。
何か嫌味を言われるのではと身構えたが、予想していた物とは全く真逆の反応が返ってくる。
「…極めて良い心掛けだと、私は思いますよ。
貴方の考えについては否定的な方もいらっしゃるでしょうが、私は好きです」
はにかみながら答える将官に男は面食らった。
どう答えたら良いものか思考した後、「ありがとうございます」とだけ答えることが出来た。
「貴方は、この国を、祖国をどう思いますか」
将官はそう尋ねた。先程の流れから、男が忠誠心と愛国心に溢れているのは分かっている筈だった。
然しそれをきちんと男の口から聞きたい、とでも言うように将官は男の顔を覗き込む。
「……勿論、愛しています。心の底から」
その返答に将官は軽く考え込むような素振りを見せる。何か変なことを言っただろうか、と男は少し不安になった。
「もし、ですが」
切り出された言葉は、やけに男の胸を惹き付けた。まるで恋する生娘のような思いを持たせる、そんな語り出し。
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凡夫(プロフ) - しょうゆだれさん» ありがとうございます！ゆるゆると更新していきますので是非とも見ていって下さい！ (2月8日 0時) (
レス) id: 4785ee1503 (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆだれ - あなたの書く小説が大好きです！これからも更新楽しみにしてます！ (2月4日 11時) (レス) id: cc28abac62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：凡夫 | 作成日時：2024年1月21日 0時
