死に至る情 イギリス ページ38
イギリス×国男主(シリアス)
ある時、一つの国で革命の動きがあった。革命と一言に言っても、それは独立の為のもの。
その国は植民地にされていた。と言っても酷い扱いを受けていた訳でもなく、むしろ可愛がられていた。
本国からの支援でぬくぬくと育って行くはずだった。しかし、民衆はそれを良しとはしない。
「祖国を解放しろ!」「かの国に制裁を!」
民衆の叫びは形となり、化身に届く。
国が立ち上がるのも、あと少し。
「…もしも、もしもあいつが俺から出て行こうとしたら」
埃っぽい部屋の中で、古いアルバムを握りしめる男。そこには彼と、金髪をした小さい少年が写っている。
年季が入っている所を見れば、写っている少年は既に青年になっているだろう。
未だ未練の残る手でその写真をなぞる。
自分の手をすり抜けていったかの国に思い馳せて。
「イギリス?」
ふと、入り口から声がかかった。まだ幼さを残した顔を持つ青年。イギリスは驚きながらも微笑み、語る。
「ここには来るなって言っただろ、どうしたんだ?」
「いや、どこにも居なかったから」
古いアルバムが彼に見られないよう元に戻し、入り口で待つ彼の頭を撫でる。
あの少年と似た金髪だが、少し暗い色をしている。
彼は少し目を細めた後、イギリスの手を払う。
不満そうな視線を向け、踵を返した。
「いつまでも子供扱いしないで欲しいな。俺はもう一人の国なんだ」
「俺から見ればまだ子供だ」
意地悪く笑うイギリスに軽い苛立ちを覚えつつも、彼はそれを流した。
「紅茶を淹れようと思って。だから呼びにきた」
「そりゃありがたいな。スコーンも焼くか?」
「俺がやるからいいよイギリスは絶対やるな」
必死の阻止にイギリスは「そ、そうか?」と返す。青年はイギリスを置いて歩いて行き、キッチンへ入ってスコーンを作る準備を始める。
そんな背中を優しげな眼差しで見ていた。同じ屋根の下で暮らす彼。自分を兄弟と慕い、笑うあの顔をイギリスは愛おしく思っていた。
だからこそ、いつか離れて行くのではないかと恐れていた。大切な宝物を二度も失う訳には行かない。
彼はまだ発展途上で、内政も安定していない頃にイギリスに見つかった。
ボロボロの体でイギリスを見上げるその瞳に、情を抱いて家に連れ帰ったのだ。
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凡夫(プロフ) - しょうゆだれさん» ありがとうございます!ゆるゆると更新していきますので是非とも見ていって下さい! (2月8日 0時) (レス) id: 4785ee1503 (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆだれ - あなたの書く小説が大好きです!これからも更新楽しみにしてます! (2月4日 11時) (レス) id: cc28abac62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凡夫 | 作成日時:2024年1月21日 0時