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「俺はお前と友達になった覚えはないが」
どちらかといえば家政婦に近いぞ、とは言ってやらない事にした。
「……?なんだ、急に黙り込んで…」
何か返答が来ると思っていたため、相手が何も言わない事に若干違和感を持ちイヴァンの方を向くと、いつの間にか俺の目の前まで近付いていた。
「うおっ、!?」
驚いて思わず煙草を落としそうになる。
音も無く近付いて来るなんてどこの暗殺者だ。
「僕達……友達だよね?」
そう問いかけるイヴァンの目は暗く、否定を許さない雰囲気があった。
いや、問いかける…というより確認のような。
堪らなくなって少し咳払いをした。
「ゴホッ…、あ、あぁ…まあ、友達…だな」
かなりの頻度で食事を共にしたり、お泊り(何を言ってもコイツが帰ろうとしなかったので渋々)もしているため、友達と言っても違和感は無い…と思う。
そう考えて肯定の言葉を口にした。
元より、否定したらどうなるかわからないのでそうしたとも言えるが。
「……ふふ」
何が面白いのか、イヴァンは少し笑った。
「…友達とはずっと一緒に居たいと思うでしょ?
だったら、君には健康でいて欲しいんだぁ」
「だからこれも没収」と、俺の手から煙草を抜き取る。
「…自意識過剰だな。友達だとは言ってやるが…」
「どうして?」
「どうしてってお前…」
煙草を取られて行き場を失った俺の手を包むように、イヴァンは手を重ねる。
座っている俺に合わせる形になる為、イヴァンは前屈みになった。
それが酷く圧迫感を感じさせる。
コイツの体格と、雰囲気そのものがとにかく重くのしかかる様だった。
白い頬をほんのりと染めて手を重ねる様は、まるで恋する乙女だ。
最も、目の奥が死んでいるから恐ろしいが。
「…いや………何でも無い」
流石に身の危険を感じたので口を噤む事にした。目の前の圧から逃れる様に少し顔を逸らす。
するとそれを追うようにイヴァンはもう片方の手を俺の頬へ添える。
傍から見れば恋人の熱い逢瀬に見えるが、実際はガタイのいい男とひょろがりの男二名だ。
「…うふふ。君って本当に…」
ピーッ、と台所の方から音が鳴り響く。
それにはっとしたのか、目の前のソイツはその濃い紫の瞳をぱちりと見開いた。
「あれー?吹いちゃったかな」
ぱたぱたと台所へ駆け込んでいくソイツを見送りながら新しい煙草を取り出そうとしてやめた。
何だか吸う気分にはなれなかったのだ。
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凡夫(プロフ) - しょうゆだれさん» ありがとうございます!ゆるゆると更新していきますので是非とも見ていって下さい! (2月8日 0時) (レス) id: 4785ee1503 (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆだれ - あなたの書く小説が大好きです!これからも更新楽しみにしてます! (2月4日 11時) (レス) id: cc28abac62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凡夫 | 作成日時:2024年1月21日 0時