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一方で目の前でかつての同級生に泣かれて非常に気まずい伏黒。
今までも写真やら告白をしてくる女子はいたけど、その場合割と温厚に接していたと自負しているし、実際告白を断ってもその場で泣かれたことはほとんど無かった。
「(どうすりゃいいんだよ…)」
参った、とばかりに自分の頭を片手でぐしゃぐしゃと掻き回した伏黒が考えた末出した結果は一言。
「…悪ぃ、」
「…どうして?──なんて、嘘だよ」
今まで両手で顔を覆っていた彼女は、伏黒の声に再び顔を上げた。
思い出すように目線を上に向けて、脳内で辿り着いた懐かしい苦い思い出に表情が歪む。
「看板娘ちゃんだよね」
「その呼び方…」
どこか嫌そうな、呆れも混じったような彼の声に心臓が痛くなる。
「…名前知らないんだもん」
中学最後のバレンタイン、勇気を振り絞って伏黒君にチョコを渡した。
クラスメートの名前は覚えてくれていた伏黒君だけど、私がチョコを渡したことはもう忘れちゃったのかな。
そりゃそうだよね
私にとっては一世一代の特別なチョコレートでも、伏黒君からしたら数あるチョコの中の一つでしかないんだから。
あー、はいはいチョコね、ありがとう。ってくらいで受け取ってだんだろうな。
「私も見たことある。伏黒君と可愛い子が学校から一緒に帰ってるところ。忘れられる訳ないよ。その時初めて伏黒君が笑ってるのを見たんだから」
「…いや、普通に笑うけど」
「あの子といる時はね。学校で笑ったのは見たことないよ」
「そう…か?まぁ学校内で笑うようなこと起こってねぇしな」
いや、それなりには起こってたと思うよ。
伏黒君が興味なくて聞いても見てもなかっただけ。
放課後私のチョコを受け取った伏黒君は「ありがとう」と私に言って、そのまま学校を出て行った。
バレンタインデーだから女子達は自分のチョコを渡せるタイミングを見計らってて、多分その日伏黒君は何度も呼び止められた。
だからいつもより学校を出るのが遅くなって、伏黒君は珍しく急いだ様子で校庭の隅にある自動販売機で三ツ矢サイダーを一本買って、校門で待っていたあの子の顔を覗き込みながらサイダーを差し出した。
女の子は最初ちょっと怒っていたけど、差し出されたペットボトルを見てすぐに飛びついて──その後、私は心臓を鷲掴みされたような感覚がした。
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Uo(プロフ) - 無さん» コメントありがとうございます❕イラストを載せるのは緊張するので、そう言っていただけると嬉しいです😖 (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
無 - 絵うっっま!!!お話の方もサクサク行かせてもらってます! (2022年12月27日 15時) (レス) @page36 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 鈴さん» こちらのミスです、すみません😖修正したので、見られるようになったと思います…! (2022年12月20日 15時) (レス) id: 37eb27a647 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - すみません、夢主ちゃんの画像が見れないのですが…… (2022年12月5日 18時) (レス) @page9 id: e67e995d1b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - アオちゃんさん» コメントありがとうございます❕そんなにお褒めの言葉を頂けるなんて、感激です…!!😖ご期待に応えられるよう頑張ります! (2022年10月3日 23時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま | 作成日時:2022年9月13日 1時