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しゅわしゅわと音を立てるそれは今にも弾けそうで、私は炭酸水が好きだ。できれば甘いのがいい。
ありがとうといただきますを元気よく伝えてから蓋を開けて喉に流し込む。
『んんっ!!おいしー!!先生ありがと!おいしい!』
「どういたしまして。いや〜Aは素直で律儀でいい子だね!恵と一緒に育ったのにね」
『今のは恵かなりピキるよ。恵は結構律儀な方じゃない?』
よしよしと撫でてくる先生を見上げながらそう言うと、先生は少し考えた後「素直さの欠如が著しいところが問題だね」と言って人差し指を立てた。
それはそうかも、なんて思って笑いながらサイダーをもう一口飲む。
喉を通るシュワシュワを感じながら、考える。
『…私昔からサイダー好きなんだ』
ただそれだけの思い出話なのに、少しだけ声のトーンが下がったのに気づいて先生が無言で視線を向けた。
と思う。目隠しで分かんないけど。
『恵が中学校行ってる時から…それってあんまり昔じゃないかな、でも私、それより前は家で炭酸水とか飲んだことなかったから』
『──恵に初めて貰った時、ヤバい、革命が起きた!!って思ったなぁ』
「ハハ!何その可愛いエピソード」
『可愛い?』「サイダーでそんな反応されたらコロッと落ちちゃうってこと」『何に?』と見事に噛み合わない会話を、最終的に笑って流してくる先生。
ちょっと腑に落ちないけど、私はまた思い出を辿って話し始める。
『毎日校門で恵のこと待ってたけど…たまに恵が「待たせてごめん」ってジュース買ってきてくれるのが好きで──あの頃は私、』
『──私、はやく強くなりたいってずっと思ってた』
サイダー美味しい。はやく強くならなきゃ。美味しい。強くなりたい。
何それと思われるかもしれないけど、恵に貰ったサイダーを握りしめながらほんとに考えてた。
そんなあまり楽しくもない思い出が詰まっていても、サイダーは好きだった。
他にも甘い飲み物は沢山あるのになんでなのかは分からないけど多分、恵にもらったから。
飲みたくなるのは、その気持ちを思い出したくなるからだろうか。
『…五条先生、私ちゃんと強くなれてた』
「聞いたさ。特級相当を各個撃破──A、よく頑張ったね」
先生はもう一度、今度はさっきよりも優しく私の頭を撫で回した。
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Uo(プロフ) - 無さん» コメントありがとうございます❕イラストを載せるのは緊張するので、そう言っていただけると嬉しいです😖 (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
無 - 絵うっっま!!!お話の方もサクサク行かせてもらってます! (2022年12月27日 15時) (レス) @page36 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 鈴さん» こちらのミスです、すみません😖修正したので、見られるようになったと思います…! (2022年12月20日 15時) (レス) id: 37eb27a647 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - すみません、夢主ちゃんの画像が見れないのですが…… (2022年12月5日 18時) (レス) @page9 id: e67e995d1b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - アオちゃんさん» コメントありがとうございます❕そんなにお褒めの言葉を頂けるなんて、感激です…!!😖ご期待に応えられるよう頑張ります! (2022年10月3日 23時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま | 作成日時:2022年9月13日 1時