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初めて見る顔だった。
いつもキラキラ光って花が咲いたような眩しいくらいの笑みが、Aの笑顔なのに。
「A?」
『……私達、特級倒しちゃったね』
「…あぁ」
『……指取り込んだ呪霊祓っちゃった』
「あぁ」
『じゃあ私…ちゃんと強くなれてるんだ』
泣き出しそうなか細い声だった。
それでも決して涙は零さずに、堪えるようにグッと眉を寄せる。
『私、あの時からずっと考えてた。呪霊の等級が報告と違うって気づいた時点で、増援を呼ぶべきだったって──』
『増援を呼ぶ余裕は無いって勝手に思って…だけど私は弱くて、誰も助からなかった』
Aの言う"あの時"──、
7年前、まだ9歳の時に二級術師と同行した任務でのことをAはずっと覚えているんだろう。
忘れられるはずもない。悲惨な結果に終わった任務だった。
そうだ…それが、俺がAを呪術師から遠ざけたいと本気で思い始めたきっかけだった。
子供の頃から思ってはいたんだろうけど、この時を境にそれは顕著に現れた。
このままじゃ消えてしまうと思った。
罪悪感に耐え切れず、いなくなってしまうと思った。
押入れの中に閉じ籠ったAを、俺は上手く慰めることもできなかった。
あの時は津美紀がAを慰めてくれた。
その津美紀は目を覚まさない。Aを慰めることはできない。
でも今は──、
「…長所があれば、必ず短所がある」
『…』
「全ての瞬間で絶対に最善且つ最高の行動ができる人間なんていない」
伏黒がゆっくりと、静かに言った言葉に、Aは微かに微笑んだ。
『私と恵は全然似てないよね。長所と短所が真逆みたい』
「…そうだな」
本当に似てない。考え方も性格も、髪の色も話し方さえも何もかも──、
でも、それでいい。
「俺達は、補い合って生きていくんだ」
「昔A、俺に言ったろ。"全部関係ある"って。…A、分け合っていこう」
"『全部関係あるよ。っていうか関係しかないよ。だってわたしと恵のことだもん』"
彼の言う通り、そう言ったのは私だった。
『……そっかぁ』
サラリと頭上に垂れるAの髪を撫でた伏黒の血塗れの顔に、涙が一粒零れて、伝った。
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Uo(プロフ) - 無さん» コメントありがとうございます❕イラストを載せるのは緊張するので、そう言っていただけると嬉しいです😖 (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
無 - 絵うっっま!!!お話の方もサクサク行かせてもらってます! (2022年12月27日 15時) (レス) @page36 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 鈴さん» こちらのミスです、すみません😖修正したので、見られるようになったと思います…! (2022年12月20日 15時) (レス) id: 37eb27a647 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - すみません、夢主ちゃんの画像が見れないのですが…… (2022年12月5日 18時) (レス) @page9 id: e67e995d1b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - アオちゃんさん» コメントありがとうございます❕そんなにお褒めの言葉を頂けるなんて、感激です…!!😖ご期待に応えられるよう頑張ります! (2022年10月3日 23時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま | 作成日時:2022年9月13日 1時