起首雷同-参- ページ10
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夜、八十八橋の下、伏黒は一人で歩いていた。
「(──術式を付与した領域を延々と展開し続けるのは不可能だ。となると、この結界は少年院の時のような未完成の領域だ──今回は逆に助かった)」
呪霊が結界内にいるなら、手順は重要。
補助監督の新田さんからの情報のもと鯉ノ口峡谷に降りてきた伏黒は、ほとんど頭の中を考え事で占領されていた。
「(──帳の必要がない)」
たった今降りてきた橋を見上げる──背後からの気配にも気づかず。
「自分の話をしなさすぎ」
「だな」
「……」
背後から聞こえた帰ったはずの同級生の声に、思わずため息をつく。
しまった…と目を伏せる。完全に焦りと考え事で脳内が占領されていたようだ。
戻ってきたのは釘崎と虎杖──声は聞こえなかったが、A。
車の中で泣いたのか、泣いたんだろう。目元が赤い。
「ここまで気づかないとは、マジでテンパってるのね」
「別に何でも話してくれとは言わねぇけどさ──、せめて頼れよ。友達だろ」
虎杖の言葉に伏黒が無言で俯いて、その後二人と並んで立っているAを見た。
「泣いたのか」とは少なくとも自分も原因だからとても聞けないが、Aの目は、もう泣き出しそうな程歪んではいなかった。
「…A」
『この任務が終わったらお見舞いに行こうねって言いにきた。ついでに、一緒に祓ってあげてもいいよ』
「…目赤いぞ」
『違う、これはあれだよ…涙が出ちゃう。だって女の子だもん。だよ』
「なんだそれ」
どこかで聞いたことがあるようなセリフを言い訳にしたAに笑うと、少し胸の奥が軽くなった。
伏黒の心配のほとんど半数を支配していたAがここに戻ってきたことは伏黒にとって更に心配を増すことなのに、それでも彼女が隣にいれば安心した。
「(──まぁ、目に見えてる所にいれば何かあった時守れるしな)」
明らかにそれとは別の理由もあるだろうけど、今はそれだけ考えることにした。
そして今は、今考えるべきことは──、
「──津美紀は寝たきりだ。この八十八橋の呪いは被呪者の前にだけ現れる。本人が申告できない以上いつ呪い殺されるか分からない」
「───だから、今すぐ祓いたい」
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Uo(プロフ) - 無さん» コメントありがとうございます❕イラストを載せるのは緊張するので、そう言っていただけると嬉しいです😖 (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
無 - 絵うっっま!!!お話の方もサクサク行かせてもらってます! (2022年12月27日 15時) (レス) @page36 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 鈴さん» こちらのミスです、すみません😖修正したので、見られるようになったと思います…! (2022年12月20日 15時) (レス) id: 37eb27a647 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - すみません、夢主ちゃんの画像が見れないのですが…… (2022年12月5日 18時) (レス) @page9 id: e67e995d1b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - アオちゃんさん» コメントありがとうございます❕そんなにお褒めの言葉を頂けるなんて、感激です…!!😖ご期待に応えられるよう頑張ります! (2022年10月3日 23時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま | 作成日時:2022年9月13日 1時