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被害者遺族の元には、悟くんが一緒に来てくれた。
一緒に来てくれただけじゃない。彼は一気に多くの死を目の当たりにした私を気遣ってか、私の前に立って、遺族に何度も頭を下げてくれた。
"「助けられず、申し訳ありませんでした」"
涙が出た。
助けられなかったのは私なのに。
私は彼の背中を見ながら、ただ嗚咽が漏れないように唇を噛み締めていただけだ。
口を開けば大声で泣いてしまうから、ごめんなさいの一言も伝えられなかった。
遺族の家を出ると悟くんは何も言わずに、大きな手で、私の頭をやっぱりぐしゃぐしゃ撫でた。
最後の最後まで全くの無力で、ボロボロと溢れる涙を拭いながら、多分その時初めて絶望というものを経験した。
呪霊は怖い。慈悲なんて微塵も持たずに、簡単に人を呪い、殺してしまう。
死が怖い。目の前で動かなくなった人を見ると、涙が止まらなくなる。
暫くは任務に行く気になれなくて部屋に閉じこもっていたけど、家の人たちはそれをあまりよく思っていなかったみたい。
だからずっと、押し入れに閉じこもって泣いていた。
そんな私を元気付けてくれたのが、他でもない恵と──津美紀ちゃんだった。
外に出ようとしない私に、恵はずっと寄り添っていてくれた。
拭っても拭っても止まらない涙を、恵は、何度も何度も拭った。
今思えば、恵が呪術師に嫌悪感を抱いてしまったのはその時だったのかもしれない。
"「俺じゃうまく慰めてやれないから、」"
体育座りで押し入れに閉じこもる私に、当時私と同じ9歳の恵が少し悔しそうにそう言って、私の手を引いて歩いた。
慣れた様子で向かった先にあったのは古いアパートで、呆然と立ち尽くす私に彼は、
"「ここ、俺の家」"
と、いつもの調子で言った。
誰かの家にお邪魔するのは初めてでアパートを前に立ち止まっていると恵は、「ん、」と手を出して、
私がその手を握った時、上から聞こえてきた大きな声にびっくりして見上げると、ベランダから顔を出した年上の女の子がいた。
"「あ、恵、おかえりー!!──あれ、隣の子ってもしかして、Aちゃん?」"
"『えっ、あ──私のこと…知ってる人?』"
"「…姉貴」"
暗いブラウンの髪を一つにまとめた女の子──恵のお姉ちゃん、津美紀ちゃんだった。
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Uo(プロフ) - 無さん» コメントありがとうございます❕イラストを載せるのは緊張するので、そう言っていただけると嬉しいです😖 (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
無 - 絵うっっま!!!お話の方もサクサク行かせてもらってます! (2022年12月27日 15時) (レス) @page36 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 鈴さん» こちらのミスです、すみません😖修正したので、見られるようになったと思います…! (2022年12月20日 15時) (レス) id: 37eb27a647 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - すみません、夢主ちゃんの画像が見れないのですが…… (2022年12月5日 18時) (レス) @page9 id: e67e995d1b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - アオちゃんさん» コメントありがとうございます❕そんなにお褒めの言葉を頂けるなんて、感激です…!!😖ご期待に応えられるよう頑張ります! (2022年10月3日 23時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま | 作成日時:2022年9月13日 1時