29話 ページ29
「僕、絶対着ないからね。ぜーったい」
「勝手におし」
おばさんはピシャリと言った。
「裸で行きなさい。ハリー、忘れずにロンの写真を撮って送ってちょうだいね。母さんだって、たまには笑うようなことがなきゃやりきれないわ」
バタンとドアを閉めておばさんが出ていった後は、なんだか少し気まずい沈黙。
でもすぐにピッグウィジョンが籠の中で騒ぎ始めて、それを合図にしたかのようにロンがため息と愚痴をこぼした。
「……僕の持ってるものって、どうしてどれもこれもボロいんだろう」
その答えは、きっとロン自身が一番分かっているはずだ。そんなことはハリーもロンも分かっていた。
でもとても口に出すことはできず、ハリーは苦笑いで誤魔化した。
「そうだな……でもその代わり、君は我慢強くていい男になると思うよ」
「まぁ、そうじゃなきゃ釣り合わないよな」
実の所いい男になるかどうかはロン次第だが、今はそんなことはどうでもいい。
ロンが少し機嫌を直したことに安堵して、ハリーは密かにホッと息をついた。
こういう時Aならもっとロンの元気を引き出せるんだろうけど、今のハリーにはこれが限界だった。
そうだ、A──。
ハリーにもロンにもドレスローブが必要なら、きっとAやハーマイオニーにも必要なはずだ。
頭の中で勝手に想像した彼女の輝くばかりのドレス姿に、ハリーは緩んだ口元を押さえた。
＊
翌朝、激しい雨が窓を打つ音に目を覚ました。
今日から四年目のホグワーツが始まる。
学校は好きだ。ハリーもロンもハーマイオニーも──寮のみんなも大好きだ。でも、休暇が終わってしまった時の気分はいつだって憂鬱なものだった。
ぐーっと伸びをすると、主人の起床に気づいたセトナクトがベッドに飛び乗って自分の体を擦り寄せた。
『おはよう、セティ』
ゴロゴロと喉を鳴らすのは愛猫、セティ。
こんなに可愛いのに、見た目はスタイル抜群で体長は120cmもある大きな猫だ。
すっかり伸びた髪を念入りに梳かして、ぐいぐいと体を押し付けてくるセティの豹柄の毛並みも念入りに梳かす。
ネグリジェからローブに着替えてキッチンに下りていくと、もうみんな下りてきているようだった。扉の向こうから話し声が聞こえる。
『あちゃー、起きたの私が一番最後だ……』
なんとなく、扉の向こうの会話に耳を澄ませる。
「マッド・アイ・ムーディ？あの変人の──」
「お父様はマッド・アイ・ムーディを高く評価していらっしゃるわ」
──マッド・アイ・ムーディ？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 419人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とま(プロフ) - 平野澪さん» コメントありがとうございます❕気長にお付き合いいただけると嬉しいです…!! (2022年7月8日 1時) (
レス) id: d352a8403d (このIDを非表示/違反報告)
平野澪(プロフ) - 面白かった！！！！ (2022年7月7日 19時) (レス) @page50 id: 46f0f08380 (このIDを非表示/違反報告)
とま(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます❕嬉しいです…!!頑張ります🔥 (2022年6月3日 1時) (レス) id: 168ae22990 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - これすっごく面白いです！！ 続き楽しみにしてます！ (2022年6月1日 20時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
とま(プロフ) - to_mi_ta_20さん» コメントありがとうございます!!すごく嬉しいです…!!更新が本当に遅いですが、最後まで完結させるつもりなのでお付き合い頂けると嬉しいです❕ (2022年5月23日 22時) (レス) id: 168ae22990 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とま x他1人 | 作成日時：2022年5月6日 15時
